「ドラゴン桜」とESG~異なるようで、異ならないもの~

はじめに

「テレビドラマの『ドラゴン桜2』って、どこが面白かったの?」

「コテコテの『受験ドラマ』でしょ!」

「違うよ、僕らの悩みや迷いを、正面から扱っているからよかったんだ」

「不良っぽい人ばかりで、異常さを強調しているだけじゃないの?」

「そんなことないよ。・・・直接みるといいよ!受験に対する思いや姿勢は、みんな同じだから、ヒントになることが沢山あるよ」

「最終回は感動して泣いちゃったよ!」

ところで・・・

「大学入試に『ESG』が出るって、先生が言っていたけど、何のことなの?」

「SDGsのことじゃないの?」

「違うらしいよ」

「就活のキーワードだって!」

過激なセリフの中に愛がある

『ドラゴン桜2』は、刺激的で、面白かったです。桜木建一先生の「過激なセリフ」の中に、受験に向かう人へのヒントがたくさんあったからです。

「最終回のセリフ」を中心に、ヒントになることを考えてみましょう。

自分の人生を他人任せにしない

印象に残ったことの第1は「おまえは自分で調べて行動した。自分の人生を他人任せにせず、真剣に選んで決めた道だ。堂々と胸を張れ!」です。

受験アドバイス

これは、君が「これからの進路を考える時」の基本ですね。「1日1日を無駄に過ごすか。1分1秒にベストを尽くすか。どっちを選ぶかは、お前次第だ」というセリフも響きますね。

「目標」をハッキリ掲げる

第2は、「性格が悪いものは東大には受からない」というセリフです。これは背景の説明が必要です。「素直な人間がまともに学習するから、最後は入試に勝つ」と言い換えることができます。

「俺はあくまで東大に行く『一番の近道を示しただけ』だ。だがな。人生の答えはひとつじゃない。あえて険しい道を行くのもいい」というセリフは説得力がありますね。

東大という「山」

受験アドバイス

本当に、東大が全てではありません。しかし、“目標”として「掲げる価値のある大学」です。指導者も施設も環境も整っています。だから、君が“目標”として達成するべく努力することを勧めます。不合格になっても、東大を目標にしたことが、人生で意義を持つ時がきます。合格・不合格は紙一重ですからね。

まっすぐに進め!それが誰かを動かす!

第3は「クソみたいな人生を変えられるのは自分しかいない。人は誰かを変えることなんて絶対にできない!だがな、よく覚えておけ。お前らが真っ直ぐな思いで突き進むとき、その姿は、他の誰かを動かす原動力になる」というセリフですね。すごいです。

すごいです。

受験アドバイス

思うようにいかない。その時にどんな行動をとるか。

「好奇心」と「向上心」がある人は必ず復活しますね。「一人だけじゃない」いう言葉は、自分に向けられたものであると同時に、他人を動かすエネルギーの源泉です。

過剰に「誰かのために」なんて考えなくていい。ひたすら「足元を改善すること」に徹すればいいのです。それがエネルギー源です。楽しく、明るく、です。

社会を変える力は自分の中にある

第4は「自分を信じて、まっすぐ突き進め。そうすれば、その姿は人に勇気を与える、希望を与える。お前らの熱意、努力、思いやりはまわりの人間を突き動かす。それは巡り巡っていつか社会を変えていくんだ」です。

「人生を切り拓け、常識を変えろ。ここから先の未来を創っていくのは、国でも環境でもない、お前ら自身だ。お前らには仲間がいる。その輪を広げていけ、いいか、自分の信じる道を行け。今、この瞬間が未来を創る」とてもいいセリフですね。

この瞬間が未来を創る。

受験アドバイス

「ドラゴン桜」の原作を書いた人(西岡壱誠氏)のホンネが書かれていますね。著者は、「徹底した個人の在り方」を追求して、このセリフに行きついたのでしょう。

将来、作家・脚本家・詩人などになろうと思っている人は、自分自身の心を耕し、心に栄養を与え、心を満たすだけの水を用意することを勧めます。受験に向かう姿勢は、すべてに通じる道です。妥協しないで行きましょう。

「ESG」って、何のことだか知っていますか?

いま、環境や社会に関して注目を集めているキーワードが「ESG」です。これは、1.「環境(Environment)」、2.「社会(Social)」、3.「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取って作られた言葉です。法令などに定められた基準がなく「評価指標」も各評価機関の判断で行われていますので、多少差異があります。が、「投資のキーワード」です。もうひとつが「SDGs」です。

ESG

「ESG」は、企業の在り方を指す言葉として使われることが多いので、中・高生にはなじみが少ないですね。が、大学に進学したら、早速、重要な概念として関わってくるでしょう。入試でも「出題のベース」になっているものですから、「現実的な課題」にあわせて整理しておきましょう。

「現実的な課題」にあわせて整理しよう
  1. 環境(Environment)

    今年の主なテーマは「脱炭素社会」の実現に向けての取り組みでしょう。このコラムでは、「第55回」に取り上げましたが、2021年7月の最新のニュースでは、ECが「2035年にガソリン車の販売を禁止する方針」などを明らかにしました。日本の企業は積極的な対応を要求されています。就活のキーワードです。

    海岸に流れ着いたプラスチック
    海岸に流れ着いたプラスチック

    環境問題は、日々の生活につながる大問題です。直近では、熱海をはじめ、全国「土石流の災害」が問題になっています。土石流の中に「産業廃棄物が混入」していたなんて、とんでもない話です。「人災」ですね。海洋生物の生態系を破壊する「マイクロプラスチックの問題」など、他人事では済まされない課題です。

    工場排水、生活排水の改善、「再生可能エネルギー」の使用、「生物多様性の確保」など、当然「入試課題」になりますから、具体例をあげて論述することが大切です。

  2. 社会(Social)

    「分断」が、トランプ氏が登場してから公然としたテーマになりました。現代社会の病巣は「人間のリキッド化」にあると思いますが、家族・家庭・愛・思い・情熱という「別次元のもの」まで、分断され、リキッド化されています。地域社会が崩壊され、緊密な人間関係が急激に失われています。困りますね。

    企業にあっては「成果主義」優先で、その反動として、自殺・引き籠り・孤独死する人が後を絶ちません。いろいろな分野で拡大する「格差」に怯え、コロナ禍の下で「社会不安」となっています。

    パワハラなど「不祥事事件」

    「教育」の場では、学校の体罰問題を含めて、パワハラ・セクハラなど「不祥事事件」がマスコミをにぎわせています。教育への信頼が失われていくことが怖いです。「働き方改革」などで先生と生徒の関係も変わるでしょう。

    「子どもの権利条約」などの人権問題、「ワーク・ライフ・バランス」、地域社会への貢献など、自分の体験を交えて「~~ありたい」という意見を持っていましょう。当然、これらは「入試のテーマ」ですから、新聞の政治・経済・社会面を観ることが受験勉強のひとつです。「硬派の文章」に慣れましょう。

  3. ガバナンス(Governance)

    本来、ガバナンス(governance)とは「統治・支配・管理」を指す言葉です。

    若い君には一番わかりにくいと思いますが、国家・社会・企業・学校で「信頼関係」が確立していることを指しています。すでに選挙権を持っている人もいますから意識したいことです。

    「信頼関係」がガバナンスの基本

    コロナ対策で「緊急事態宣言」が何度も発せられるのは、政府・行政と国民・民間の信頼関係が揺らいでいるからです。厳しいですが、まさに「統治」の基本が試されているわけです。「ガバナンス」を再構築し、不祥事の回避、リスク管理のための「情報開示」や「法令順守」が重要な課題です。教育関係では、生徒と先生の「信頼関係」がしっかりできていることがガバナンスの基本です。入試では課題文のテーマ・総合問題として出題されるでしょう。

入試対策:最近の世界のニュースから

  1. エチオピアの巨大ダム建設が、アフリカの地図を塗り替えてしまう。

    「大エチオピア再生ダム」(Grand Ethiopian Renaissance Dam)は、いろいろな課題を抱えながら、開発が進められています。が、ダービンや電気設備は、中国が費用を負担しています。エジプトは大反対で、技術長の殺人事件(2018年)まで起こっています。私は「第50回」でエジプト・ナイル川について書きましたが、各国の利害が対立しますから、チェックしておきましょう。

  2. ワーク・ライフ・バランス

    ワーク・ライフ・バランス(work life balance)とは、「仕事と生活の調和」という意味です。言い換えると、やりがいを持って働き、仕事をやる。私生活でも、充実した生き方ができることを指しています。これは、言うは容易く、日々努力が要求されることです。私自身も体験したことですが、個人・社会・企業が協力しなければ「やり切れない」です。女性にとっては、出産・育児と仕事を両立させることは大変なことです。「バランス」というのは、男性の分担が前提ですから、時間的にも物理的にも意識を変えないと「行き詰まり」ます。日常生活ですから、社会的支援が必須です。「結婚しない人」「離婚する人」「独身を貫く人」が、男・女ともにますます多くなっていくでしょう。

    入試では「生き方の問題」・「社会の在り方の問題」ですから、対立する意見を無視しないで包括した論述が要求されます。一方的にならないことです。

  3. アフガニスタンとタリバーン

    アフガニスタンでタリバーンが、アメリカの駐留軍の撤退にあわせて攻撃を仕掛け、政権を奪取しました。これまでの政府・軍も腐敗し、統治能力が欠けていて「ガバナンス」が機能していないという情報がありました。中村哲医師の殺害事件もありました。深刻な貧困・治安の乱れ・テロ・麻薬の温床です。

    タリバーンは、「イスラム原理主義者の集団」です。女性は学ぶことも、働くことも禁止され、娯楽や文化を否定し「イスラム法」に基づく生活を強要しています。民主主義を否定し、公開処刑を日常的にやっているといいます。

    爆破後のバーミヤンの仏教遺跡
    爆破後のバーミヤンの仏教遺跡 【画像の引用元

    イスラム以外は否定し、「バーミヤンの仏教遺跡」も爆破しましたね。ワーク・ライフ・バランスどころじゃないです。「これからがみえません。」が、入試では「中央アジアへの目線」がポイントになるでしょう。

(安達昌二:お茶の水ゼミナール特別顧問)