はじめに

もう一度「行ってみたいところ」は・・・・

私は、エジプトですね。

帆船に乗ってナイル川で遊ぶのです。クレオパトラの船のようです。

しかし、現在のナイルの水は汚くて、寄生虫が一杯。危険です。

慣れない旅行者は免疫がないから、ナイル川の水で遊べないです。

乾燥地で雨が降らない上に、ナイルの流れが止まり、水が淀んだからです。

1970年。上流に「ナセル湖」ができてから、湖水から水蒸気が上がり、ナイルは「氾濫の時代」から、「雨が降る時代」へ変わったのです。日干し煉瓦の家屋に雨よけの「屋根が必要になった」のです。自然環境が激変したのです。

受験アドバイス

ナイル川の氾濫は、夏季（7月ごろ）に発生するモンスーンによって、大量の雨がエチオピア高原に降り注ぎ、その水のほとんどが「青ナイル川」に注ぐことで引き起こされました。全長6,650kmですから、＜札幌＝鹿児島の約4倍＞です。

ナセル湖ができたことによって氾濫が収まり、季節変化に応じて流量を調節して、洪水防止や可航条件の改良を図ることができるようになりました。また、その水を灌漑、発電に利用するほか、湖面での水産資源開発や観光開発も可能になりました。

しかし、水蒸気が上がることで雲ができ、灌漑用水の塩分濃度が高まったことや、下流への土砂の流下が激減したことで「新たな問題が発生」したのです。

この「自然環境と人間」については、中国の「三峡ダム」でも、同じような課題が持ち上がっています。歴史的遺産が水没したり、ダム湖の湖底に堆積物が溜まったり、ダムの破壊を心配したり・・・。こうした探求課題は、世界的な問題です。

エジプトはナイルの賜

「エジプトはナイルの賜」という記述は、紀元前五世紀のギリシアの歴史家ヘロドトスの著書『歴史』の中にあります。彼は、紀元前500年から始まる“ペルシア戦争”を軸に、東方諸国の歴史・風土・伝説、ギリシア諸ポリスの歴史を記し「歴史の父」と呼ばれています。

入試「総合問題」として、ナイル川は、環境問題・気象変動・開発と保全・水質保全・農業生産・人々の暮らし・砂漠化・歴史素材などと共に、現代では、スエズ運河・古代遺跡・観光・イスラム教・中東戦争・「アラブの春」・オペラ「アイーダ」・イスラエルとの抗争・貧困・人口問題などの出題が予想できます。

近年の「日本の経済」との関わりから言えば、スエズ運河の事故・石油など物流・イスラエル問題が「データ」として「写真」「図版」問題になりますね。

ナセル湖の下に沈んだ古代遺跡

私は、アスワンハイダム堤防の向こうに広がる「ナセル湖」を見ながら、呆然としていました。「このナセル湖の下に沢山のヌビア遺跡を中心とした古代遺跡が眠っている」と思ったからです。エジプトの歴史は5,000年以上もあるのです。この長い時間の中に、いろいろな物語があるのです。ピラミッド・ミイラ・神殿・葬祭殿・神話はその断片にすぎません。

私たちが知っている歴史は、あまりにも短く限定的です。イエス・キリストが誕生してからも2,000年余にすぎません。近年は、歴史を短く捉えすぎて、地球の時間と空間を粗末にし過ぎています。コロナ禍も怒りのひとつでしょう。

「ラムセス2世によって建設されたアブ・シンベル神殿も、湖底に沈むはずだった」と思いました。ユネスコが救済資金を集めて「神殿をブロックごとに切り取り、約60m上方の小高い丘に移動させた」のです。もともと、この神殿は、岩山を掘り出すように造られたのですが、19世紀（1813年）になって「発見」されるまで放置されていたのです。この大規模な移設工事がきっかけになって、遺跡や自然を保護する「世界遺産が創設」されました。

この神殿には、「光の照射」「ヒッタイト・シリア・リビア・ヌビア」などとの戦いが記されているなど、興味深いものが沢山あります。探索テーマです。

受験アドバイス

スエズ運河は、フランス人のレセップスの提案で有名ですね。1869年に開通しましたが、建設費を賄うために、イギリス・フランスを中心とした資本家が「株式会社」を設立しました。が、やがてエジプト政府が財政破綻をしたために、大量の「株」をイギリスに譲渡して、イギリスの財政管理下に置かれてしまいました。しかし、1956年7月、エジプトのナセル大統領は「巨大なアスワンハイダムの建設費」を賄うために、強引に「運河の国有化」を宣言しました。その結果、イギリス・フランス・イスラエルとエジプトとの間で「第二次中東戦争」が勃発しました。中東戦争は「第四次世界大戦」の火種です。入試テーマの重要なひとつです。

ヴェルディのオペラ「アイーダ」の第2幕第2場の「凱旋行進曲」は特に有名ですね。

このオペラは、運河の柿落し公演のために作曲されたといわれることが多いですが、実際の初演は2年後（1871年）でした。私は、ソウルで聴いたことがありますが、スケールの大きさと荘厳さに圧倒されました。君にも見せたいです。凄いですよ。

なぜ、砂漠の中に「岩絵」があるの？

モロッコ・マラケシュの街はずれから、ジープに乗ってサハラ砂漠に行く途中の家は全体が「朱色」でした。なぜだろうか？実は、サハラ砂漠の色は朱色なのです。シルクロードがあるタクラマカン砂漠のような「砂色」ではないのです。

現在のサハラ沙漠は「文字通り沙漠」ですが、サハラ沙漠の各地で、見つかった12,000年前頃～6,000年前頃の岩石画から、当時は湿潤な時代で森林や草地があってキリンやゾウ、アンテロープ（ウシ科の草食獣）、サイもいて、狩猟が行われていたことがわかっています。気象が大変化したのです。

そして約5,000年前頃からサハラ沙漠が乾燥し始めました。人々の生活圏が狭まり、ナイル川の河岸地域に集まってきたのです。

古代エジプトが繁栄した紀元前3100年頃から紀元前525年の時期は、この「乾燥化が進んだ時期」に当たります。

諸君。ピラミッドの上から、4,000年の歴史が・・・

「エジプト史で何を学ぶか？」は、君が何に関心を持ち、何に興味を持つかという「感性」に拠るところが多いですね。

君の「総合的な学力」は「興味・関心・感性」から透けて見えるのです。

エジプトに遠征したナポレオンは、圧倒的な「歴史の重み」の前で委縮している兵士の様子を見て『兵士諸君、このピラミッドの上から、4,000年の歴史が君たちを見下ろしている』と戦意高揚の「檄」を飛ばしたことは有名ですね。

大学入試という圧倒的に「高い壁」を前にして、君への檄は「逞しくあれ！」に尽きます。戦うのです。合格するのです！

この遠征で「ロゼッタ・ストーン」が発見されました（1799年）。現在、イギリスの大英博物館に実物がありますから、ただ鑑賞するだけではなく、「この貴重な文化遺産は、イギリス・フランス・ギリシャのどの国に所属されるのが妥当か」を考えて下さい。根拠をもって、君自身の意見を持つのです。

また、カイロの「エジプト考古学博物館」に行って、ツタンカーメンの『黄金のマスク』を見てもらいたいです。素晴らしく豪華です。これが少年王のものですから、歴代の王（ファラオ）のものは、ものすごかったでしょうね。

古代エジプト人は、人間は「5つの要素」でできていると考えていました。

1. イブ（心臓）：人間は死後も冥界で生き続けると信じられていましたから、死者は「心臓の計量」の審判を受けます。アヌビス（ジャッカルの頭部・死神）と他の神々によって、もし心臓が「マアト（正義）の羽根」よりも重ければ、心臓は即座に怪物アメミット（頭部は鰐）に食べられてしまいます。

2. バー（魂）：「死者の書」などで、人間の顔を持つ「鳥」の姿で描かれます。
3. シュト（影）：影のない人間はない。黒く塗りつぶされ姿で描かれます。
4. レン（名前）：人間は「生まれた時に与えられた名前」で生きるのです。
5. カー（生命力）：人間の誕生とともに生まれる「活力」・「生きる力」です。

エジプトの「探求素材」は多様にありますね。テーマをもって調べましょう。

例えば「ピラミッドはどのようにしてつくられたのか」・「ミイラをCT・MRIで分析し生前の病気や食べ物を見る」・「ヒエログリフで文章をつくる」・「エジプトと日本の多神教を比較する」・「アラブの春が行き詰まった原因」等です。