仮面をつけて別人になる~仮面の文化・仮面による可能性~

はじめに

「三保の松原」から見る富士山はとてもきれいです。

むかし、天女が舞い降りてきて、この松原の枝に「衣」をかけて綺麗な海で気持ちよく泳いでいたら漁師の白龍(はくりょう)が、この衣に気が付いて隠してしまった。

天女に「舞を見せてくれたら返す」と約束したら羽衣をつけた天女が、舞いながら雲の向こうに消えていったという伝説です。

世阿弥はこの「羽衣伝説」にそって、謡曲「羽衣」をつくりました。

能・羽衣は、世界に誇る日本の伝統の美です。

三保の松の下で「能・羽衣」を演じたい

むかしある時、ひとりの女性が「恩師の紹介ですが・・・」と、私のところにやってきました。彼女は「羽衣の本物の松の下で、能・羽衣を薪能でやりたい」といってきたのです。「屋外では、天候も不順だし・・・」といっても引き下がらない。結局、彼女の熱意で多くの支援者を獲得して実現するのですが、当日の砂地の仮設舞台は不安定でした。が、夜の静寂さの中の「幽玄の美」を沢山の人が共有できて素晴らしかったです。

私は早稲田大学の民俗学の大林太良先生・民俗学者の谷川健一先生の協力を得て「白鳥伝説」の学習会を近くの「羽衣ホテル」で主宰しました。

この記録は雑誌「ユリイカ」に残っています。文化人類学の分野ですね。

数年後、彼女の行動がNHK銀河小説で「ドラマ化」されて放映されました。

受験アドバイス

天女を白鳥になぞられて語られることが多いです。世界中に「白鳥伝説」がありますが、いろいろなバリエーションがあります。インドネシアに広く伝わっている伝説の多くは「豊穣」と繋がっているものが多いそうです。美しい白鳥が飛来することと深くつながっているのでしょう。民俗学は興味深いです。

白鳥のカップル

かぐや姫も天に還っていった

富士市に「竹とり塚」があります。富士山に近いこの竹藪の中から「かぐや姫」が生まれたといわれています。育ての親である翁・媼に「不老不死」の妙薬を残して去りますが、翁は富士の山に登ってこの妙薬を燃やしたので、その後、山頂から噴煙が立ち上ったといわれています。勿論、諸説があります。

かぐや姫

かぐや姫は、天上から迎えの御車が来て、「羽衣を着ると天女」になり、月の世界に去っていったといわれます。民俗学では「竹取物語」の天女と、三保の松原の天女の話は、仮面伝説で同根だという説があります。

飛び立つ白鳥

受験アドバイス

人間が多様な仮面を持っているように、「入試の仮面」もいろいろあります。

「共通テスト」は、「センターテスト」とあまり変わらない。平易でラクだというプロの意見を鵜呑みにしてはいけません。しっかり「新しい仮面」がついているのです。

昨年の「第1日程」「追テスト」「第2日程」の問題は、「試行テスト」でチャレンジした課題を踏まえて作問しているのです。だから確実に、この四つを「過去問」として解いてください。学参の各出版社が出している「対策本」も有効です。

お茶ゼミ√+の「冬期講習」で、講師の指導をしっかり受けてから、受験してください。

安易な受験は禁物です。「仮面の変化」に沿って指導できる学校は、少ないからです。

古代ギリシャの仮面劇

ギリシャで古代のポリスを廻ってみると、どこにも劇場があることに気づきます。市民は兵士であると同時に、劇場で演技することが義務だったのです。

ポリス市民の「一体感を涵養する」ためですね。このステージで演じられる悲喜劇は素晴らしいです。現代でも「オイデプス王」など上演されます。

ミレトスの劇場跡
ミレトスの劇場跡 【画像の引用元

劇場は屋外です。音量マイクがないのですから、どうしてセリフが伝わるのか。不思議に思った私は、ステージに降りて行って、声を出してみました。最後列までしっかり「声が通るように設計」されているのですね。素晴らしい建築技術です。半円形のところがオーケストラ(orchestra)です。

古代ギリシャの仮面
古代ギリシャの仮面 【画像の引用元

物語の進行は合唱隊(コロス)が受け持ちます。コーラスですね。この前で「仮面」を付けた人が、それぞれの「役」を演じるのです。

受験アドバイス

「共通テスト」の新しい仮面は「実用に即した問題」が前面に出るということです。

昨年の国語は、新味に欠けるといわれましたが、2022年度は、バッチリ実用に即した出題が予測されます。

世界史では、日韓問題を踏まえて、朝鮮問題が出題されていましたし、中国では「天安門事件」まで理解していることを求めています。

物理・化学・生物など、理系科目は、抽象的な出題より「現実的な課題」がリード文になっていたりすると思います。

何よりも、英語の出題のように「リテラシー」「思考力」などを求める出題が「新しい仮面」です。対応できるようにしっかり準備してください。

羽化する蝉を観察する

小学生の次男が、夏休みの自由研究で「蝉の羽化」を観察していました。

自宅の庭から「蝉のサナギ」を見つけてきて、羽化の様子を記録するのです。君もやったことがあるでしょうね。

少しずつ、少しずつ、時間をかけて「脱皮」して行く。その途中で絶対に羽根を触ってはいけない。固まってしまうからですね。生命の掟です。さながら、受験勉強に頑張っている君のようです。

蝉の羽化

人間の生命も、10月10日をかけて、母親の羊水の中で、細胞分裂を繰り返し、少しずつ形をつくっていくのです。昔、人間が海の中で生命を育んできたように・・・。「生命の神秘」です。仮面を剝いで、本来の姿になっていく。生化学を専攻しようとする人の分野ですね。

受験アドバイス

大谷翔平選手が大リーグのMVPを取りましたね。彼は「フィジカルの強さが大切だ」といっていましたが、受験でも同じですね。12月から3月までの長期間の戦いですから、「健康」が全ての基本です。「平常心」の大切さを、ヘレニズム時代のストア学者は「アパテイア」といいました。セネカ・ゼノンです。ストイックの語源です。受験は「禁欲が要求される期間」です。

変化が多い時ですから、如何に不安定な時期を乗り越えるか。動じない心(不動心)を貫き通すことができるか。貴重な訓練期間です。頑張ってください。

変身願望と仮面

むかし静岡市の「登呂遺跡」の近くに住んでいたことがあります。

遺跡公園の片隅に「芹沢圭介美術館」があります。ここで、染色家で民俗学が専門の芹沢圭介さんが、世界各地から集めた「仮面」を展示したことがあります。仮面は多様で、世界各地の地域文化により、全く異なる表情を見せるのですが、東南アジアやアフリカの民族の表情は、特に多様で驚きます。

私たちになじみが多いのが「能面」ですね。翁・小面・般若などいろいろな能面がありますが、舞台に立った演者は、仮面にそって「別人格」になっています。

能面「増女」
東南アジアのお面

仮面は、シャーマンが「占い」「祈り」「予言」の時につけることが多いようですが、仮面をつけることで「巫女」になったり、「神」になったりするのですね。

受験アドバイス

「共通テスト」をはじめ、どんな入試でも「得点差が出る問題」を挟んでいます。

どんな人でもできる問題だけでは、合・否を決めることができないからです。

特に大学入試では「正答率」について「仮説」を立てて、実施、「検証」まで行い、次年度の資料とします。入試問題を通して、大学・学部のidentityを顕すことが原則ですから、過去問を通して「傾向」を知り、「対策」を立てることが重要になるのです。「共通テスト」は、全国共通で、地域の格差が出ないことを原則として作問しますが、国公立大の「個別テスト」や、私立大学は「明快なクセ」を持っていることに留意しましょう。

マスカレード(仮面舞踏会)

マスカレードは、もともと一年の決まった時に仮面、仮装の人が登場して踊り、豊作を祝福する季節的な儀礼のことです。日本では、新嘗祭などで、巫女になった少女たちが「御神楽」を披露しますね。

ヨーロッパではマスカレード(masquerade)といいますが、これはマスクmasque(mask)「仮面」からきたとも、アラビア語のマスハラ(maskhara)「物笑いのたね」からきたとも諸説があります。

 映画『ロミオとジュリエット』より
映画『ロミオとジュリエット』より 【画像の引用元

イタリアのヴェローナの街に、小さなベランダがある家があって、観光客の人気スポットになっています。ここはシェークスピアの「ロミオとジュリエット」の素材になった舞台なのです。中世のイタリア・ヴェローナの仮装舞踏会で知り合った二人は「相手が何者か」を知らないまま恋に陥ってしまいます。こうして、華麗な演劇的物語が出来上がりました。

ヴェネツィア・カーニバル
ヴェネツィア・カーニバル 【画像の引用元

私は、ヴェネツィアの派手なカーニバルが大好きです。2021年はコロナで開催できなくて残念でした。華麗で賑やかなカーニバルが、早く復活することを願います。

受験アドバイス

誰にも「変身願望」があります。いくつもの仮面を持つことは無駄なことではありません。大切なことは、この「仮面をいかに使い分けるか」です。

受験生の仮面は、普通の高校生の仮面とは異なります。弱気な受験生は「強気の仮面」をつけてください。いつの日か本物になる時がくるでしょう。「仮面の効用」は大きいのです。サナギである君が、どんな羽化をして飛び立っていくか。愉しみです。

(安達昌二:お茶ゼミ√+特別顧問)

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