「賢者の石」~新薬の開発に向けての薬の歴史~

はじめに

新型コロナウイルスで「新薬」の開発が急がれていますね。

今後の展開がみえませんが、新薬の開発に、いまは「すがる思い」ですね。

有効なワクチンの開発まで、まだまだ知恵を集める必要があります。

この機会に、君は「薬学への関心」を深めたと思います。

また、私が第1回に書いた「人類全体に貢献する大志」の意味が、現実になりましたね。

私は、君のこれからの活躍に期待しています。

さっぽろ羊ヶ丘展望台のクラーク像
「Boys, be ambitious like this old man」さっぽろ羊ヶ丘展望台のクラーク像 【画像の引用元

「Boys, be ambitious like this old man」

「青年よ、大志を抱け!」と、札幌農学校(北海道大学農学部)で教鞭をとったクラーク先生(William Smith Clark)の別れの言葉で有名ですから、君も知っていることでしょう。

現在も大きな影響力を持っている名言ですね。

君が「向かうべき方向」を明確に示しています。

私は第1回で、次の三つの大志に触れました。背景にF・ベーコンがあります。

  1. 人類全体に貢献しようという野心
  2. 国家や地域を発展させたいという野心
  3. 自分自身を成長させていきたい野心

現在の新型コロナウイルスの状況をみると、この三つに優先順位はなく、「いかに燃えるか」が問われていることが分かります。

君が、現在の勉強に集中することが、人類全体に貢献することにつながるのです。

新渡戸稲造
新渡戸稲造 【画像の引用元
新島襄
新島襄 【画像の引用元
内村鑑三
内村鑑三 【画像の引用元

まさに「青年の君は、大志に向かって邁進する時」です。不退転の決意をして頑張ってください。

受験アドバイス

クラーク先生に影響を受けた教え子たちは、ものすごく活躍しました。『後世への最大遺物』の内村鑑三さん。新渡戸稲造さんは「国際連盟の事務次長」として活躍し、『武士道』は流暢な英語で書かれた著書です。「同志社大学」を創立した新島襄さんはアメリカで指導を受けた日本人の最初の教え子でした。

「教育は非力ではありません。大きな力を持っています」。優れた指導者の下で、しっかり教えられた人間は、生涯にわたって大志を実現する努力家です。

ハリー・ポッター「賢者の石」と錬金術

ハリー・ポッターの最初の映画は「賢者の石」でしたね。

この映画・小説は、魔法という形で私たちが「こうありたい!」と願っている夢を表現していますね。

物語が最後に行きつくところが「賢者の石」です。

ハリー・ポッターと賢者の石
ハリー・ポッターと賢者の石 【画像の引用元

君は、ギリシャ神話のミダス王の「手に触ったらすべて金になる物語」を知っていますね。

王が、調子づいていたら「愛娘に触れたので、わが子まで金になっちゃった」というお話です。

象徴的な「金がすべてではない」話ですね。

王と娘
王と娘 【画像の引用元

ニュートンは「錬金術」にこだわった

ニュートンは、偉大な科学者・数学者であり、歴史上最高の頭脳の持ち主だといわれますが、「錬金術師」「オカルトの研究者」でもありました。

私たちには、錫とか鉛とかいう「卑」金属を「貴」金属に換える方法はないかと思います。

ここでキーになるのが錬金術です。

ヨーロッパの中世になると「錬金術」がキリスト教会の中で発達します。

これは、修道院の中で、実験を重ねて「貴金属をつくろう」という試みです。

修道院の中に「理科の実験室」が設けられていたのです。

錬金術
実験器具の開発も錬金術の中で生まれた
実験器具の開発も錬金術の中で生まれた 【画像の引用元

この最終目的は「賢者の石」を作り出すことだったのです。

金属に限らず、様々な物質・人間の魂・肉体を対象にした研究で、それを練成しようという試みですから、現在の「化学」の基礎になったのですね。

受験アドバイス

中国の「煉丹術」(れんたん術)は、草や木を乾かしたものを擦ったり、混ぜ合わせたりして造りますが、これは「漢方薬」として、私たちに馴染み深いですね。秦の始皇帝も、道教の「不老不死の薬」を求めたと『史記』にあります。

これは、ヨーロッパの錬金術と同じだと解釈してよいでしょう。いいかえると「賢者の石」と「薬」の根っこは同じだということです。

新型コロナウイルスに対抗できる薬とは

新型コロナウイルス(COVID-19)に効く「新薬」を、速く開発・発見して欲しいと願っています。

いまや、世界中が「焦り」にもなっていますね。

化学的に「合成」されたものでも、自然界に存在する「生薬」からのものでもいいですから、人々の不安・恐怖を取り除くワクチン・薬の開発が渇望されています。

さまざまな生薬
さまざまな生薬 【画像の引用元
根、茎、果実、葉などを調製加工
根、茎、果実、葉などを調製加工 【画像の引用元

現在の新薬の「研究・開発」は、過去の実績を踏まえた応用が多いですね。即効性が高いからでしょう。

例えば、エボラ出血熱に有効な薬からの転用した「レムデシビル」です。最近、認可されましたね。

また、日本の研究チームによる「アビガン」も注目されていますね。

世界中の知見を結集して「信頼できる新薬」が欲しいです。

受験アドバイス

新型コロナウイルス(COVID-19)に対抗する新薬の開発は、錬金術と同じ発想と努力だといえます。錬金術の試行錯誤の中で、「硝酸」「硫酸」「塩酸」など、現在の化学薬品の発見がありました。また、その途上で、各種の実験用具が発明されました。

延長線上で、アントワーヌ・ラヴォアジェが、著書の中で「33の元素」や「質量保存の原則」を発表したのです。化学の基礎知識ですね。

近代化学の父 ラヴォアジエ:フランス
近代化学の父 ラヴォアジエ:フランス 【画像の引用元

私は、現在行われている世界中の研究開発は、新型コロナウイルス対策にとどまらず、「新しい自然科学」を生み出すと思います。君が活躍するステージです。

ハリー・ポッターの中の魔法薬

ハリー・ポッターの中にも「生薬」の研究場面が出てきますね。

私はその中で「ポリジュース薬」が面白いと思っています。

「ポリジュース薬」は魔法界の変身薬ですが、私たちの変身願望がベースにあると思っています。楽しいです(笑)。

また、その原料・実験用具・製作過程などが興味深いですね。

草や木を混ぜ合わせて有効成分を取り出す。これは、現在も行われている「薬のつくり方」の一つです。

チベット ポタラ宮
チベット ポタラ宮 【画像の引用元
ヤク
ヤク 【画像の引用元

むかし、薬学を研究している友人が、チベットに行って「ヤクの糞」の採集をしたことがあります。

フンの中に含まれる微生物が目的だったようです。こうした研究が重要なのです。

「化学と魔法は表裏一体」でもあるのです。

受験アドバイス

素人考えですが、私は北里大の大村智先生がアベルメクチンを発見し、それを基にイベルメクチンの開発に繋げたように、「生物学的製剤の研究・成果」に期待しています。これは、細菌やウイルスといった生物を基につくられる薬だから、「免疫薬」として、継続・発展できると思うのです。

ワクチンは、感染症の予防に用いる病原体からつくられた無毒化、弱毒化された「抗原」を投与することで、体内に病原体に対する抗体産生を促す方法ですから、長期的に見ると「免疫」を獲得するには最適だと思うのです。

現代はまさに魔法界そのもの

新型コロナウイルス(COVID-19)は、「魔法界のウイルス」のようですね。

また、人工知能(AI)や遺伝子操作は、不可能を可能にし、見えないものを見えるようにしていますから、「魔法界」と「現実界」の境界がなくなってきたように思います。「ドラえもん」の世界と同じですね。

IT・AI・遺伝子操作・クローン技術(バイオ)の発展とともに、魔法が魔法ではではなくなっていくのです。

今後の世界を考えると、怖いです。

「賢者の石」は人間が永遠に生きることができる「生命の石」を創造することでした。

いまやバイオ技術は、クローン人間を作り出す寸前まで来ています。

クローン羊:ドーリー
クローン羊:ドーリー 【画像の引用元

旧約聖書の創世記では、神様は「知恵の実」を食べた人間を、もうひとつの禁断の「生命の木」から遠ざけるために、アダムとイブを「エデンの園」から追放したと記しています。

神から生命を授かるアダム
神から生命を授かるアダム 【画像の引用元
追放されるアダム・イブ
追放されるアダム・イブ 【画像の引用元

しかし、人間は「知恵の力」で科学を発展させ、「生命の木=賢者の石」に手が届くところまで来てしまいました。

中国の学者が「猿のクローン」の創出に成功し、生命倫理の立場から議輪が巻き起こりましたね。

<猿から人間へ>。科学を倫理から切り離して考えると、大変危険なことになります。

新型コロナウイルスは、この厳しい現実を突きつけていますね。

受験アドバイス

古代ギリシャ・ヘレニズム時代は、高度の科学が発達していました。

特に、エジプトのアレクサンドリアにあった「王立図書館」には、70万冊の蔵書と共に、世界の科学者が集まっていたようです。 しかし、アルキメデスやプトレマイオスらが集まった、研究センターの「ムセイオン」がなくなると、科学の殿堂が再興されることはなかったのです。宗教が科学の発展を抑えたからです。

イブン・スィーナー
イブン・スィーナー 【画像の引用元
ラテン語に翻訳された「医学典範」
ラテン語に翻訳された「医学典範」 【画像の引用元

その後、 古代ギリシャの科学は、イスラムの世界で保存され、イブン・スィーナーのような偉大な学者を輩出し、イベリア半島を経由してヨーロッパに輸入されました。 そして、ルネサンスと続くのです。

(安達昌二:お茶の水ゼミナール特別顧問)