Shall We Dance:「王様と私」とタイ~国家としての独立・人間としての自立~

はじめに

君は有名な“Shall We Dance”という歌を唄ったことがありますか?

ミュージカル『王様と私』の主題歌です。ポピュラーソングです。

これはタイ(シャム)のラーマ4世が、外国人家庭教師と展開する物語です。

ラーマ4世は、イギリスやフランスの帝国主義の下で、困難な時期に「独立国」を維持するために四苦八苦した『王様』です。子供の教育のために、イギリスの家庭教師を雇いました。彼女が書いた『シャムの宮殿とイギリス人教師』をベースにして、M・ランドンが「創作した物語」です。

史実と異なる部分が多いですが、タイの歴史と背景を理解するには、丁度いい導入になります。最近は、俳優の渡辺謙の当たり役ですね。

受験アドバイス

タイは大変親日的な国です。イギリスやフランスの強硬な植民地化政策の影響を受けますが、ラーマ4世は日本の明治維新と同じように、仕方なく「不平等条約」を結びながら辛うじて独立国を維持し、「自国の尊厳」を守り通した人物です。

タイは、伝統的な中国の強い影響を排除するためにイギリス・フランスの帝国主義政策を巧みに利用し、独立国家として伝統・文化を守り続けたのです。

アユタヤには14世紀の「日本人町」の旧跡があります。山田長政は静岡市出身ですので、いろいろな思いで歩いたことがあります。

自主と自立:「ゴルゴ13」と「ブラック・ジャック」

「ゴルゴ13」と「ブラック・ジャック」。君は、この漫画を知っていますね。

主人公は、スナイパー(狙撃手)と無免許医師ですね。まさにoutlawの二人です。ジャンルも分野も異なるふたつのマンガに共通するものは何でしょうか。

「ブラック・ジャック」は手塚治虫のマンガですが、ここに描かれている孤高の医者は、まさに「自立」した個人です。

「ゴルゴ13」に描かれているデューク・東郷は「非情に徹した人」ですね。

全ての甘えを許さない「自立」した人間です。この作品は世界の「裏情報をネタ」にしていますが、教科書には書かれない「非情」が描かれています。

これはさいとう・たかをさんの作品ですが、下調べを丁寧に行い、チームで作品を制作しているそうです。特にアメリカの裏の顔(国家のエゴ・残酷さ)を暴くネタが多いです。政治・経済に関心がある君には、丁度良い教材です。保障してくれる国家も組織もない。自分で判断し行動する「自立」した人です。

自分で判断し行動する「自立」した人

その代わり「孤独」から逃げることができません。彼らに優しさ・思いやりがないのではありません。「捨てること」と「捨てないこと」のケジメをつけているのです。基本は次の三点です。①「他人任せにしない」 ②「自分自身の判断で行動する」 ③「経済的に自立する」ことです。

受験アドバイス

君は「人気アイドルのイベント」に参加したことがあるでしょうね。商業イベントですから、感情を煽りまくり、爆発させる「仕掛け」が見事です。

人気アイドル

イベントではなく、「理性」を見失っている大衆に政治を委ねることは危険です。

近代国家は「理性を持った人間の存在」を前提にして成立していますから、「合理主義」「人権の尊重」「自由」「平等」が尊重されるのです。しかし「大衆社会」になって、この前提が崩壊しています。大人も子供も・・・。

イギリスのEU離脱などは「ポピュリズム=populism」に支配された典型的な例です。煽情的な強い刺激によって、政治権力が左右されることは危ないです。大衆の人気取りのために『バラマキ政策』をとる政治など、理性より感情・衝動が政治の方向を決めるからです。

幕末:「独立国」を構想した人がいた

長岡駅を降りて、グルリと周囲を見渡しても「城らしきもの」はありません。

ようやく城址跡の碑を発見して、「この小さな地域を、幕末の混乱期に独立させようとした」人物がいたことを考えました。

それは河井継之助です。彼のことは、司馬遼太郎の『峠』という小説で有名ですね。一度読むことを勧めます。幕末の日本は黒船の来航で動き始め、「倒幕派」「佐幕派」に二分され、まさに国内全体が「峠」でした。

峠

この混乱の世の中にあって、どちらにもつかず「非戦中立」を保ち、ひたすら「藩民の暮らし」を豊かにすることで独立・発展させようと考えたのが河井継之助です。継之助は、混乱する世の中で「まず足元を固める藩政改革」を選びました。しかし、この北陸の小藩は「北越戊辰戦争」に巻き込まれて焦土と化してしまいます。継之助は江戸・長崎・ヨーロッパの武器商人らを知っていましたから、無知で狭い了見で「独立」を考えたのではありません。厳しい情勢の中で「いかにあるべきか」を考え、こうした選択を構想したのです。これはもの凄いことです。

受験アドバイス

河合継之助と同じ時代の「小林虎三郎」も忘れることができません。彼のことは、山本有三の戯曲『米百俵』で有名です。彼は荒廃した長岡藩を支援するために、近隣の藩から見舞いとして送られた米百俵を藩士に配らず、教育振興の基金の一部に使ったのです。「時代の要請に応えられる学問や芸術を教え、優れた人材を育成しよう」と学校の開設に役立てたのです。この話は「米百俵の精神」として、現在も受け継がれています。

戯曲の中で「早く米を分けろ」といきり立つ藩士たちに向かって、虎三郎は「この米を一日か二日で食いつぶしてあとに何が残るのだ。国が興るも滅びるも、町が栄えるも衰えるも、ことごとく人にある」「この百俵の米をもとにして、学校を建てたいのだ。この百俵は今でこそただの百俵だが、後年には一万俵になるか百万俵になるか、計り知れないものがある。いや、米俵などでは見積もれない尊いものになるのだ。その日暮らしでは長岡は立ち上がれないぞ。新しい日本は生まれないぞ。」と山本有三は語らせています。

誇りある主権国家であるために

いまウクライナで戦争が行われています。これは「ウクライナという独立国の主権が脅かされていること」が大問題なのです。専制国家・独裁国家は「他国の主権」を平気で踏みにじるのです。国際的なルール(国際法)を無視するのです。この戦争で、ロシアは旧ソ連邦時代の領土を取り戻すことを目標としているようですが、ここにあるものは「自国だけの正義」です。

旧ソ連邦の時代にはウクライナに主権がなく、「従属国」にすぎなかったのです。現在のウクライナの支援は、NATO・アメリカ・日本と広がっていますね。ロシアの周辺の国家は、昔の状態になることを恐れています。

ソ連邦の時代に、コメコン(ブルガリア・ハンガリー・東ドイツ・モンゴル・チェコ・ポーランド・ルーマニア・ソ連の八か国)という組織がありました。

Council for Mutual Economic Assistance
Council for Mutual Economic Assistance 【画像の引用元

これは、形式的には独立国でしたが、実態はソ連を中心とする経済・国家分業制が敷かれ、独立した外交を制限されていたのです。だから従属国・衛星国とも呼ばれました。

義弟が住んでいたので、私はハンガリー・チェコスロバキアなどに行ったことがあります。閉鎖的なハンガリー・チェコ・東ドイツは息苦しかったです。

受験アドバイス

受験対策としては、1933年に結ばれた「モンテビデオ条約」をマークしましょう。条約では「独立国家として認められる要件が四つ」規定されています。①永続的な住民がいること ②明確な領土があること ③政府があること ④他国との外交能力があることです。外交能力とは、具体的には「条約締結権」や「外交使節交換権」などです。

小さな国の「独立」と大帝国の「支配」

イギリス・フランスの強烈な帝国主義政策の下で支配された「アジアの国」の中で、辛うじて独立を確保できたのは、日本とタイだけでした。その後、日本は帝国主義政策にのめり込んでいきました。太平洋戦争です。

そしていま、中国の「一衣帯水」戦略の前で、東南アジア諸国・島嶼国は大きな分岐点に立たされています。中国の過去の海外政策をみると、明の永楽帝時代の「鄭和(ていわ)の遠征(1405~30年)」が強烈です。これは「朝貢貿易」といって、大艦隊を海外の諸国に派遣し、「我が国へ従え!そしたら恩恵を与える!!」という上下関係構築のメッセージでした。が、派遣の裏に、クーデターで政権を握った永楽帝が、「前帝の建文帝がこの地域に逃避している」というウワサを聞いて、33年間・七回に及ぶ遠征を繰り返したという説があります。真実は不明ですが・・・。

鄭和艦隊の進路
鄭和艦隊の進路 【画像の引用元
鄭和
鄭和 【画像の引用元

鄭和は「イスラム教徒の宦官」でしたから、大遠征を可能にしました。イスラム圏を安全に就航するためには、「イスラム教徒=ムスリム」であるということがポイントだったからです。この遠征はカリカット・ホルムズ・アフリカ東岸(マリンディなど)から紅海沿岸まで進出しましたから、近年の中国の海外戦略に利用しやすい遠征なのです。歴史をしっかり学びましょう。

受験アドバイス

台湾と中国の対立が鮮明になっていますね。もともと台湾は、中国の歴代の王朝と複雑な関係にありました。入試問題では、清王朝の遷界令(1661)とその前後の「鄭成功の抵抗運動」をチェックすると良いでしょう。「明=漢民族」の王朝支配が「清=満州族」に移ると台湾を拠点に起こった、明の遺臣の台湾独立運動です。首謀者の鄭成功(国姓爺)は、中国人を父に、日本人を母に持っていました。これを素材として近松門左衛門が脚色したのが『国姓爺合戦』です。浄瑠璃・歌舞伎で有名です。

なお、「遷界令」とは清王朝が出した政策ですが、内容は沿岸地方の住民を内地に強制移住させて無住地帯とし「交易を遮断しよう」というものです。

台湾はどこにあるのか
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国姓爺合戦
国姓爺合戦 【画像の引用元

これから「台湾問題」は、日本に深刻な影響を及ぼすでしょう。国家の防衛費の増額は、新税の創設、教育・文化・福祉予算の削減問題として、私たちの生活に直接かかってきます。君は政治・経済・外交・文化・事件・災害など、いろいろなことを関連付けて考えるセンスを磨いてください。

(安達昌二:お茶ゼミ√+特別顧問)

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