東京オリンピックは、まさに「黒船」ですね~世界から日本を見た「国のかたち」~

はじめに

東京オリンピックは、まさに「黒船」ですね。

コロナ禍で「開催する」のも大変。「開催しない」のも大変です。

どちらにしても、メリットとデメリットがあります。

「この道はいつか来た道」です。

どっちに行くの??
どっちに行くの??

鎖国から開国へ。その契機になったのは「黒船」の来航・・・

今度は「東京オリンピック」。いずれも海外から来た「大波」です。

国内向けの目線と海外との接点

江戸幕府は、「国内に眼を向けた政治」をしていました。

だから外から「黒船」が押し寄せてきて「それが許されない状況」が生まれ、バタバタしたのです。幕府に、海外諸国と「対等」に付き合っていく「発想」や「知恵」が欠けていたからです。あまりにも「近視眼の政治」でした。

黒船来航
黒船来航 【画像の引用元

現在のコロナワクチンの対応と酷似しているので可笑しいくらいです。

だから「日米和親条約」(1854)「日米修好通商条約」(1858)のような不平等条約を押し付けられたのです。治外法権・関税特権などひどい内容です。国益もプライドもズタズタにされて、腹が立ちますよ。

コロナワクチンの接種

コロナワクチンの開発・購入交渉・接種の遅れと似ています。東京オリンピックはその試金石です。

受験アドバイス

ペリーの『日本遠征記』を見ると、<日本が、文明世界が過去・現在に成し遂げたものを手に入れたならば、日本人は、将来、強力な競争相手になるだろう・・・>という記述があります。ペリーは、したたかで、慧眼の持ち主です。こうした人間と「対等に渡り合える人材」が要求されていました。これは「いま」も変わりません。

入試対策は、その「入口」にすぎません。君の「未来の活躍」に期待しています。

ペリーは、画家・写真家・学者・研究者などを連れてきて学術記録を残しています。

『日本遠征図鑑』も推薦します。まさに総合問題の探求に適しています。

この国をどのように発展させたらよいか

明治政府は107名からなる「岩倉使節団」(1871~1873)を、産業革命が終わり、豊かになったアメリカ・ヨーロッパ12か国に派遣し、その発展ぶりにビックリします。「このままじゃいけない!」各分野から派遣されたリーダーたちは考えます。日本を近代化するためにはどうしたらよいか。

岩倉使節団
岩倉使節団 【画像の引用元

先進国との「格差を埋めるためには、何をしたら良いか」と必死でした。

そこで、日本国を、農業国から「資本主義国家」にしようしたのです。先進国を見て痛感したことは「貧しい国は相手にされない」ということでした。

明治期の富岡製糸場
明治期の富岡製糸場 【画像の引用元

その結論が「富国強兵」・「殖産興業」の政策だったのです。

豊かな国を造る

資本主義国家であるためには「資本家」と「労働者」が不可欠です。それに生産手段として「工場」も「資源」もありませんから、やることはいっぱいあります。「岩倉使節団」の主目的は「不平等条約の改訂」でしたが、発展したイギリスやフランスを見て、「近代化を急ぐ必要」があることを痛感します。

そこで実際にやったことは、官製の「工場」(富岡製糸場など)をつくり、それを廉価で払い下げて「資本家」をつくります。

現在の富岡製糸工場
現在の富岡製糸工場 【画像の引用元

「鉱山」を開発(三池炭鉱・古川銅山など)し、資源の確保を図ります。

「労働力」は農家の子弟・子女で賄います。全国に生糸・絹綿の紡績工場を作り「輸出産業」を育成します。「鉄道」を敷設し、物流の流れをつくります。

そして「富国強兵」です。強い「陸軍」と「海軍」創設し、徴兵制を敷いて強い兵士を育成することにしました。これらは「近代化」とよばれました。

追いつけ、追い越せ・・・

緊急課題は「西洋文化の導入」です。

ヨーロッパ流の社交界の導入は「猿真似だ」と、厳しく風刺されましたが、「鹿鳴館」(1883)をつくり、人と情報の交流機会をつくりました。日本伝統文化を捨てて、洋風文化の導入を行い、ともあれ「文明開化」へ驀進です。

鹿鳴館
鹿鳴館 【画像の引用元
ビゴー風刺絵
ビゴー風刺絵

この結果、豊かな財閥・富裕層が生まれた半面、貧しく犠牲を強いられた人々がたくさん生まれました。「ものすごい経済格差」を生み出したのです。

大急ぎで勧めた近代化は、やがて「戦争へ」と流れていくのです。

受験アドバイス

「近代化の負の部分」は、足尾銅山鉱毒事件(1972)を告発した田中正造に象徴されます。私は、若い頃、紡績工場で働く高校生を教えたことがあります。全国から集められた15~18歳の少女たちは、『女工哀史』(細井和喜)・『ああ!野麦峠』(山本茂美)程ではないけれど、厳しい・矛盾だらけの労働環境で働いていました。

君の祖父母の時代のことですから、近代化は遠いものではありません。

重要なのは「人材育成」です

明治政府は「学制」(1873)を整えます。近代化の柱でした。

モデルはフランスの学制でした。大学校区・中学校区・小学校区を決め、義務教育を開始します。現在の大学・中学校・小学校、国立大学の教育学部の原型です。地方の優秀な人材を集めて「師範学校」をつくります。また「教科書」を決めます。これまでの中国の「四書五経」のような古典ではなく、福沢諭吉らが書いた書籍や翻訳ものを使います。

松本市:旧開智学校
松本市:旧開智学校 【画像の引用元

現在、全国に「文化財の指定」を受けている校舎建築があります。近代化の意気込みが伝わってきます。

受験アドバイス

先日、仲間たちと「SDGsのカードゲーム」をやりました。

カードを使って、世界全体の経済と時間と環境などを総合的に考えるゲームです。

SDGsのウエディングケーキ
SDGsのウエディングケーキ 【画像の引用元

私はZOOMでやったのですが楽しかったです。ゲーム感覚で世界の課題を考える良い機会になりました。チームで素早く反応したのは京都の公立中高一貫校2年生の生徒でした。これから学校でも使われるでしょう。入試対策にもつながりますね。

海外から、知識と技術を輸入する

海外から「お雇い外国人」とよばれる有識者を招聘します。彼らは、技術・学問・制度など各分野で活躍します。確認できるだけで2690人いるそうです。

ラフカディオハーン(小泉八雲)
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ラフカディオハーン:『怪談』
ラフカディオハーン:『怪談』 【画像の引用元

ほぼ2年間の滞在でしたが、ローマ字のヘボン式の「ヘボン」・『怪談』の「ラフカディオハーン(小泉八雲)」・大森貝塚の発見者「モール」・ラクビ―紹介の「エドワード、クラーク」・美術家の「フェロノサ」・札幌農学校の「クラーク」・医学の「べルツ」・野球殿堂入りした「ウイルソン」・日本アルプスの命名者「ゴーランド」など馴染みの人も多いです。たくさんの影響・足跡を残しました。次は、君が海外の途上国の支援に行く番です。

日本アルプス
日本アルプス 【画像の引用元

また全国の優秀な人材の海外留学を支援し、沢山の知見を持ち帰りました。

福沢諭吉・中村正直・中江兆民・津田梅子・森有礼・新島襄・永井荷風・北里柴三郎・志賀潔・夏目漱石・森鴎外など多士済々です。

大学関係では、慶応義塾大学の福沢諭吉、同志社大学の新島襄、津田塾の津田梅子らが活躍しました。北里研究所の北里柴三郎もドイツに留学しています。

明治になって、日本はダイナミックに動きました。

津田塾大学の創設者:津田梅子
津田塾大学の創設者:津田梅子 【画像の引用元
同志社大学の創設者:新島襄
同志社大学の創設者:新島襄 【画像の引用元

2022年の入試では、明治以降の「日本と海外の交流」がテーマになるでしょう。そのための基本的な知識をマスターしておくことは必須です。

受験アドバイス

「旧体制の幕府」と「新体制を目指す薩・長両藩」を中心とした政争の背後に、フランスとイギリスの利権争いが絡みあっていたことも視野に入れておきましょう。現実に、武器の販売(死の商人)が暗誦しました。

長崎のグラバー邸は、いまは観光地になっていますが、当時は「武器売買」の場でした。武器の売買は儲かるのです。それが歴史を動かす大きな力にもなります。現在も、武器輸出で経済を頼っている国家がありますね。

1930年代の世界恐慌をアメリカが乗り切れたのは、ルーズベルト大統領の「ニューディール政策」(1933~1937)であると解説されることが多いですが、実際は第一次世界大戦による大量消費による景気回復によるところが大きいです。

入試では「戦争と経済活動」という観点も忘れないことです。論述テーマです。

「選択」する勇気を持つ

「東京オリンピックの開催」について、<やる>・<やらない>の選択をしなければならない「ギリギリの時」が来ていますね。政府は「やる!」という方針で「聖火リレー」を行っていますが、コロナの猛威の中で「やらない」という声も大きくなっていますね。重要な選択です。

政治的思惑に走りすぎて「意志」を示す勇気がないことが、一番危険です。

いま、君と同年齢の「オリンピック・アスリート」たちが一番苦しんでいますね。必死に耐えて、努力している彼らを応援しましょう!!

私たちは、いつも「選択」しながら生きています。

入試についても、君が「どの大学を選択する」のか。いまから、数か月のうちに決断しなくてはなりません。その根拠は何か。学力・経済力・地域・進学後の進路、コロナなどの環境ですね。1学期は「選択の幅を広める」ことに全力を傾けてください。学力が上がれば、選択の幅も広がるからです。

受験アドバイス

私は高校時代に、J・P・サルトル(仏)の『実存主義とは何か』を読んでショックを受けました。すでに、古典になっていますが、「未来に向かって自分を投げる」という「投企」の考え方に感銘を受けたのです。

現在、私たちは「根源的な不安」に立ち向かう「勇気」を必要としています。自由に生きること・人間の尊厳を大切にすること、選択を自覚すること、未来に責任を持つこと、という思想は、現在の私たちに通じます。

このことは第9回でも書きましたから、再読してください。

(安達昌二:お茶の水ゼミナール特別顧問)