時代のキーワード:「不安」「恐怖」「焦り」~介護:ユマニチュードを知ろう~

はじめに

人間はひとりでは生きられない。

誰かを支え、誰かに支えられて生きていく。

個人・地域・行政であっても、それが誰かには変わりない。

人間を「ニンゲン」と読まないで「ジンカン」と読むとわかりやすい。

人と人の「アイダ」という意味で、人間関係を意味する言葉だからだ。

人間はひとりでは生きられない 誰かを支え、誰かに支えられて生きていく

病気・老化・死といった個人に起こることが伴う喜び・悲しみ・不安・悩み・怒り・葛藤・恐怖も人間関係の中で生まれる。

こうした感情のもとにある甘え(他者への依存)は人間関係を象徴するし、恨み・妬み(コンプレックス)は感情の一番根深いところにある。

受験アドバイス

日本人の人間関係に関する書籍を読んでおこう。古典的なものでは、土居健郎『甘えの構造』・山本七平『日本人とユダヤ人』・ベネディクト『菊と刀』・角田忠信『日本人の脳』・内村鑑三『代表的日本人』・加藤周一『雑種文化』は基本図書である。最近、グローバル社会になって<日本人らしさ>が議論されることが多い。

タテ社会の人間関係
タテ社会の人間関係 【画像の引用元

特に、中根千枝『タテ社会の人間関係』が、立教大学入試で採用されることがある。是非、読了しておきたい。

大学入試で問われるのは“人間関係の理解”

小説をはじめ「物語」は、事件として殺人・不倫・離婚・闘争など、極端な場面を描かないと成立しないです。普段、起こりえないことがドラマをつくるからです。正直でひそやかに生きている、真面目な人の日常生活は「物語」にならないのです。平凡な日常に“事件”を起こして物語にするのです。

「共通テスト」の国語・物語文で、頻繁に「崩壊した家庭のトラブル」が出題されますが、理由は事件があるほうが「設問が作りやすい」からです。

しかし、殺人・闘争事件は除かれますね。

テレビのCMに出てくる「幸せな家族」には、日常に問題を抱えて生きている「人間と生活」が描かれていないから、設問ができません。

崩壊した家庭 幸せな家族

「大学入試センター試験」で、太宰治の「故郷」が出題されたことがありました。母親の臨終にあたり久しぶりに帰郷したけれど、親戚・兄姉から疎まれる「屈折した心理」がテーマでした。このような作品は、時代背景を含めて、心理的なものを通して「人間とは?」を問う読解力をテストしているのですから「空回り」しないで、物語の「筋を追った学習」をしていくことが基本です。

受験アドバイス

「普通」の定義が難しい時代になりましたね。親子・兄弟・親族の定義も曖昧だし、「比較が難しい」からです。私の近くに「同性婚」をした人がいます。実際に子供が2人います。また模範的だと思っていた家族が「相続」でもめて「争族」でバラバラになった例があります。離婚・再婚も珍しくないですね。だから、入試問題でも「心理的な葛藤」を出題したり、「相克する関係」を考えさせたりするのです。知識だけでなく、イメージ力が問われているのです。「SDGsの目標5」にジェンダーがあります。今年の入試でテーマになるかもしれません。

ユマニチュードという考え方を理解しよう

いまや高齢化社会ではなく、すっかり「高齢社会」になってしまいましたね。

巷に、高齢者の姿がたくさん観られます。特別養護施設・有料介護施設へ入所した人も増えました。高齢の友人・知人の大問題です。

君は将来、ビジネスとして介護施設を開業すること、社会福祉士などの資格を取ることを考えていますね。この分野の専門的な人材が求められています。

長寿は「経費負担」「医療」「福祉」「安全」「介護」「相互支援」「教育」「文化活動」等の課題を提示しています。他人事ではなく、孤独死・安楽死・自殺・介護の問題として、今後君の人生にも降りかかってくる大問題です。

例えば「介護の方法」にはいろいろな考え方や手法がありますが、私は「ユマニチュード」という考え方に賛同しています。特に「見る」「話しかける」「触れる」「立つ」という四つの方法に賛成しているのです。

介護の方法1 介護の方法2

この中で、私は特に「立つ」ことに注目しています。高齢者は「寝ているのがラクだ」といって寝ころびたがる傾向が強いのですが、寝てしまうと極端に視野が狭くなってしまうので危険です。天井を見る、横を見るしかできなくなるからです。「立つ」ということはかなり意志と努力が要求されますから、「人間らしく生きる」には重要なポイントだと思っています。

受験アドバイス

先日亡くなった脚本家の橋田寿賀子さんは、絶対に殺人・不倫を書かないと決めていたと聞きます。だから、日常茶飯に起こる「生活上の課題」をドラマの柱にしたといいます。これは大変珍しく、サスペンス・事件ものより大変なことです。

「テーマの設定の観点」から見れば、入試問題と同じですね。実生活に結びついたテーマを課題文に使うからです。男性に比べて、女性は「身の上相談」「投書」欄をよく読むから、「小論文に強い」ということが話題になったことがあります。

橋田さんも「ほとんどのドラマは『投書欄』をみていれば書ける」といっています。

人生の折々のことが書かれているからで、入試の出題文章もこうした角度から検討することも一考するべきですね。男子は「テレビ欄」と「スポーツ欄」だから。(笑)

時代のキーワード:「不安」「恐怖」「焦り」

いつでも、「時代を象徴する言葉」があります。

「発展」「進歩」「明るい」が、社会全体が元気な時のキーワードでした。

が、コロナ禍で沈んだ空気が充満している現在は「不安」「恐怖」「焦り」がキーワードだと私は捉えています。

焦り 不安 恐怖

入試問題を解く際に、「このような語句」が見えない形で裏にあると考えてください。課題文・設問・論述に不可欠の語句です。文章が、暗く・淀んだ感じだったら隠れキーワードは「不安」「焦り」「恐怖」だと考えると、答案がスムーズに進むと思います。隠語を見抜くことも学習項目のひとつです。

身近な人が亡くなった後の手続のすべて
教え子が書いたベストセラーになった本 【画像の引用元

最近の企業の広告・宣伝を見ると、「不安」を刺激する商品が多いですね。

「健康」をサポートする商品・相続手続き・精神安定を促す書籍・新しい機器の紹介・ケア商品・介護付き施設・年金・倒産など、明るい未来より「不安」を素材としたものが多いです。CMで「いますぐ申し込んでください」「30分以内に申し込めば、このお値段です!」と煽る。こうした宣伝が目に付きますね。しっかり吟味して買うのではなく、焦らせて買わせるのです。

受験アドバイス

入試でも「不安」を煽り、「恐怖」「焦り」を刺激する宣伝・広告が多いです。秋風と共に増えますから踊らされないようにしましょう。「冷静さを大切」するのです。自分の進路に必要な情報を選択し、過剰な宣伝に乗ることがないようにしましょう。自分が将来やりたいことを中心に考えることです。コロナは簡単に収まらないことを覚悟して「対面授業」と「リモート講義」を組み合わせたところがいいですね。

また入試問題では、これから「どうなってしまうか?」を考えさせる<データ・資料・図表>が多くなると予想します。積極的に模試などを受験して、新しい傾向に慣れてください。学力の地域格差・学校格差・学内格差が広がるでしょう。

コロナ禍で、人間の孤立化・リキッド化が進む

コロナ禍で人間関係(ジンカン)が危機的な状態にありますね。どうしてもコロナの拡がりを止めなくてはいけないので、「三密」を避けざるを得ないです。が、この間に「失われていくもの」に対する注意を怠ってはなりません。

気が付いた時は「コミュニケーションが苦手な人」「相手の話が聞けない人」「挨拶ができない人」が増えてしまい、とんでもない状態になっている「恐怖」があります。また、パソコンを使いこなし、情報編集能力に秀でた人・デジタルサイエンスができる人など、「人間のリキッド化(液状化)」による格差も拡大すると思います。「ITの進展」に留意しましょう。

バスや電車の中でも「スマホ」に夢中になっている人が多いですね。

自分のことだけに集中してしまい、他人への配慮・思いやり・目線がなくなっている人が目立ちます。極めて危険なことです。

学校・地域によっては「リモートで行う授業」が始まっています。「集団でしかできない行事」が廃れ、他者との接触を最低限にとどめようという風潮が、人間の無力化を進め、孤立した個人は孤独の中に閉じ込められています。

受験アドバイス

コロナ禍で社会全体が異常な緊張状態に置かれていますね。このような時は「冷静に対処すること」を最優先にすべきです。「不安」「焦り」で行き詰った時は、道元禅師の「只管打座(しかんだざ)」に立ち返ることを勧めます。ともあれ、難しく考えないで、静かに座って「自分の呼吸を1~10まで数えることを徹底する」といいです。不安や焦りを取り除くには、簡単で一番いい方法です。坐禅の極意のひとつ「数息観」です。誰でも、いつでも、どこでもやれる方法です。

静かに座って自分の呼吸を1~10まで数える

曹洞宗の大本山は、福井県にある永平寺ですが、「迷い」を生じたときは坐禅体験をすることを勧めます。大学に入ったら、機会を見て「正法眼蔵」を読んでください。

(安達昌二:お茶の水ゼミナール特別顧問)