緑の風に揺られて~「探究のテーマ」を掘り起こしてみよう~

はじめに

緑の風が吹いています。さわやかな風です。

新学期に慣れてきたら、学問の「探求」に入りましょう。

緑の風に誘われて、君の「新芽を大きく伸ばす時期」が来たのです。

「可能性を顕在化」させて実力にするのです。

小さな「種」が、大きな「果実」につながる

何でもない小さな柿の「種」を土の中に植えると、やがて「芽」を出します。

その芽が伸びて、「木」になります。木に「枝」がついて「葉」が茂ります。

枝の先に花が咲いて「実」がなります。再び、「実から種」ができます。

何の変哲もない「種」から、こうして「実」ができて循環するのです。これが、段階にそった可能性が、顕在化される自然界の「発展の法則」です。

君の「種」が、将来の「果実」にまで結集するには、このいくつかの過程を経なくてはなりません。一度に「種から果実にはならない」のです。

種を植える 芽が出る 果実が成る

受験も同じです。一学期の可能性を、「夏の飛躍」につなげるのです。いまは、「水をやり」、「手をかけて」、「目をかけて」、新芽を育てる時期です。

受験アドバイス

アリストテレスの「質量(ヒュレー)・形相(エイドス)」の考え方は、一元論です。

分かり易く言えば、「種」と「果実」の関係のようなものです。教科「倫理」を選択した人は、プラトンの二元論の「イデア論」と対比して学習したことでしょう。

現実の中に、「可能態」がある。その中に「顕在態」があるという考え方は、ダイナミック(dynamic)な運動体・過程ですから、何事にも応用できますね。

君の中にある「可能性の種」に水をやって、大きく育てましょう。

探求:ハンガリー大平原を走る

ハンガリー大平原を爽快に走った経験がある人は少ないでしょう。

「何もない」のです。ズット平原が続きます。気持ち良いですよ。

ハンガリー大平原
ハンガリー大平原 【画像の引用元

古城の遺跡で夜間に開かれる「オペラ」の公演を求めて走るのですが、崩れた城壁のステージの下で、夏でもコートを肩にかけて聴くのです。まさに「探究」です。世界は広く、紹介したいところが沢山あります。

早くコロナが収まって、君に味わってもらいたい世界です。

ディオーシュジュール城
ディオーシュジュール城 【画像の引用元

ブダペストは素晴らしく魅力的な街です。上手は「ブダ地区」で城があります。下手は「ペスト地区」で市場があります。このふたつの地域をドナウ川が遮っているので「セーチェーニ鎖橋」がかかっています。

セーチェーニ鎖橋
セーチェーニ鎖橋 【画像の引用元

市場には多様な言語が混じっています。地域の人はマジャル語です。日本語と同じように「主語―述語が並ぶ」体系です。親しみと「異文化」の世界です。

受験アドバイス

フン族が建国したのがハンガリーだという説があります。周囲に、ウクライナ・ロシア・オーストリアなど強国がひしめいている地域だから、この国に、いろいろな民族が侵入し、持ち込んだ音楽があります。その中で、ジプシー(ロマ)音楽の流れが強いですね。君は、リストの「ハンガリー狂詩曲」・ブラームスの「ハンガリー舞曲」を聴いたことがありますね。コダーイやバルトークの音楽を聴くことを勧めます。

探求:シーボルトは、日本と世界をつなぐ先駆者です

オランダ東インド会社の支店である「オランダ商館の医師」としてシーボルトは日本(出島)に来ました。「鎖国中」ですから、植物学者として、日本の固有種の採集・標本づくりに魅力があったでしょうね。『日本博物誌』には貴重な記録がたくさん残されています。また1824年に「鳴滝塾」を開塾し、蘭学(西洋医学)を日本に広め、高野長英・二宮敬作ら優秀な人材を育成しました。医院を開いていますし、日本初の女医(産科)の楠本イネは娘です。

200年を記念した日本の切手
200年を記念した日本の切手 【画像の引用元
オランダで発行された切手
オランダで発行された切手 【画像の引用元

プロイセン政府から「日本の内情探索」を依頼されていたという話もあり、当時、禁止されていた日本地図(伊能忠敬作・縮尺図)を海外に持ち出す「シーボルト事件」を起こし、国外追放になっています。

その後、ペルーの日本の開国に関わり、幕府・オランダ・ロシア・フランス・アメリカなどと幅広く関係しました。近現代史の縮図のような人物です。

受験アドバイス

シーボルトに関連するテーマは「総合問題」の魅力的テーマです。

江戸末期にオランダ人として来日しましたが、実はドイツ人です。多様な顔を持っている人物ですから、総合問題の対策として「探究=マーク」するべき人物です。

シーボルトは日本の文化・地理・気候・天文など広い範囲に関心をもっていました。

『日本植物誌』『日本動物誌』は、日本固有の動植物を、世界に紹介した貴重な書物です。大量の博物標本を、オランダのライデンに送り、いまなお貴重な資料になっています。いろいろな教科・角度から作問が可能な人物です。

探求:感染症の研究者として野口英世

野口英世は「感染症の研究」で、世界と日本をつないだ医者・研究者ですから「探究」の素材をたくさん持っています。

偉人として、教科書に載ったり、紙幣になったりして、多くの人に崇められるのは素晴らしいことですが、「人生に悪戦苦闘した人間」だと思います。彼の履歴を辿ってみれば「人間臭さ」伝わってきます。ここに研究者・学者として矜持・エリートではない人間の努力を「探究」する価値があると思います。

野口英世
野口英世 【画像の引用元

例えば、障碍者の苦労・学会との確執・ロックフェラー医学研究所・アメリカの研究生活・感染症の研究の意味・論文の評価・黄熱病・ノーベル賞・アフリカの風土病・・・など、どのような角度からも出題テーマが設定できます。

野口英世の母の手紙
野口英世の母の手紙 【画像の引用元

教科書に「母親の手紙」が載っている場合が多いですが、感染症「コロナウイルスの究明」が求められている現在は、「黄熱病」の研究に取り組んでいた研究者の姿が「探究素材」になりますね。

受験アドバイス

当時の新興ロックフェラー医学研究所(現ロックフェラー大学)は、「新薬の開発」に関わる人材を求めていました。1904年に、野口英世は認められて、中南米やアフリカの風土病に有効な薬の開発に携わっていました。この当時の欧米系の研究者は、危険な風土病・伝染病の研究に携わりたくなかったので、ロックフェラー医学研究所は、非ヨーロッパ系の優秀な研究者を求めていたとも言われます。この研究所は、生物学・医学界で多大な実績を残し23人のノーベル賞受賞者を輩出しています。

最近のコロナウイルスの研究から「予防・治療ワクチンの開発」は、創薬メーカーの<特許=利益>に関わることです。難しい問題が横たわっています。

探求:文豪・森鴎外とビタミンB1(脚気の原因)

森鴎外の「舞姫」は、高校の教科書に掲載される「定番」ですね。

ベルリンに官費留学したエリート青年が、現地の舞姫に恋をする物語です。

当時の「日本人の枠」を超えた恋愛を描いた小説ですから、「青春のきらめき」に共鳴した人が多かったでしょうね。高校生に「考えさせたいテーマ」をいくつも内包していますから興味深い小説です。

これは森鴎外自身の留学体験を素材にしたものといわれますが、文体になれないと読みにくいかもしれません。

森鴎外は、陸軍の軍医として活躍した「文武両道」の人でした。

舞姫
舞姫 【画像の引用元

当時、「脚気の原因」について議論が分かれていました。

この病理現象について、「海軍」と「陸軍」は全く異なる見解を持っていたのです。海軍は「脚気栄養失調症説」をとっていましたが、陸軍は「脚気伝染病説」でした。森鴎外は、陸軍医として最高のポジションにいましたが、陸軍の説に固執し、科学的な対応をしなかったといいます。小説家とは「異なる顔」です。

鈴木梅太郎
鈴木梅太郎 【画像の引用元
ビタミンB1の構造式
ビタミンB1の構造式 【画像の引用元

この当時、すでに鈴木梅太郎博士の「オリザニン」による脚気の原因究明がハッキリしていました。が、森鴎外は無視したようです。「オリザニンはビタミンB1」のことです。鈴木博士は、日本初のノーベル賞をもらってよい人でした。

受験アドバイス

君は「ワイル粒子」について関心がありますか?量子力学の分野です。

1929年にドイツのヘルマン・ワイル博士によって「理論的に存在が予言」されていたもののようですが、2015年に「ヒ素化タンタル」という特殊物質の中で初めて見つかったものだそうです。現在、東大の肥後友也先生・中辻知先生らが研究を進めているそうです。「電場や磁場に極めて早く反応」するので、これでメモリーをつくると、高速の次世代メモリーとして使えるばかりでなく、多様な応用ができるそうです。

創造的進化を心掛けること

緑の風に揺られて「学問の基礎」を固めましょう。

これから「総合問題」を出題する大学が増えると思います。なぜなら、「総合的な判断力」が要求される時代だからです。人生は、小さな事実・実用的な知識・過去の体験・背景となる教養を組み合わせて築くものです。

若い時に、しっかり基礎的な「知識や教養」を積んでもらいたいから、入試で出題するのです。「現実=出題テーマ」に合わせて、スピードよく判断する能力をマスターすることを要求しているからです。

受験アドバイス

入試で高得点の取り方

  1. 長文を読解するには、段落を明快につけることです。段落のラスト5~8行に注意して、「キーワード」を探しましょう。読解のポイントです。
  2. データ・図表を見る時は、「最高値」と「最低値」に注意しましょう。なぜ上昇したのか、下降したのかを考えるとヒントが見えてきます。
  3. 傍線が引かれている場合は、その「前後にある語句」に注意しましょう。特に、3~4行前にある「語句の微妙な表現」に注意しましょう。
  4. マークテストでは「誤答」を探しましょう。本文全体が誤っている場合と、一部分が誤っている場合があります。「語尾に注意する」ことです。
  5. 「時間配分」に注意し、確実に得点できる問題を素早くやりましょう。「10分程度の見直し時間」が確保できるようにインターバル練習をしよう。
  6. マークテストで、解答に迷ったら「最初の直感」で、とりあえず解答をしましょう。あとで「ユックリ考えて」から解答するのは避けましょう。

(安達昌二:お茶の水ゼミナール特別顧問)