次の時代のカギを握るのはインド~ITの人材を中心に輝きを増すだろう~

はじめに

君は、これから、インド人と勉強したり、仕事をしたりする機会が多くなるだろう。

特に、IT関係では、インド出身の優秀な人が日本にも沢山きています。

先日は「インドの技術者と結婚する」といって来た女性もいました。

インドの憲法(1950年)でカーストによる「差別行為」は禁止されていますが、社会に深く定着したカースト制は、職業選択の自由を制限しています。実質的に「職業は世襲制」なのです。

職業や種族の違いによって「ジャーティ」と言う社会集団に分かれていますが、ジャーティは2,000~3,000あるそうです。個人として動きがとれないですね。

IT関係ではインド出身の優秀な人が日本にも沢山きています

しかし,最近になって、「IT技術者」など、新しい職業分野では、カーストの規制を飛び越えて、能力次第で「職業選択」が可能になっています。

こうして、一部分ですがインド社会が動き始めているようなのです。

入試では「作問が難しい」ので避ける傾向がありましたが、これからは、もう少し深く取り上げられるようになるでしょう。

受験アドバイス

東京の西葛西には、2,000人以上のハイレベルなインド人が住み、丸の内・日本橋方面の主に金融IT技術者として通勤しているそうです。この地域には、インターナショナルスクールやヒンズー教の寺院もあるようです。

君は「インド式計算方法」のドリルをやったことがありますか。私たちが理解している方法とは異なり、非常に発想がしなやかですね。

インド式計算
インド式計算 【画像の引用元

不思議な魅力と歴史を持ったインド

インドは、広い国家で、人口も約13億人です。とても一口に言えない非常につかみにくい国です。

「貧富の差が大きい」だけでなく、国内の民族も多様、使われる言語も1,600あるといいます。公用語も16あります。

地域による風俗も習慣も違いますから、インドを知っているといっても、一部分しか理解できないのです。

公用語はヒンディー語(Hindi)ですが、主に「北インド」で使われています。歴史的な背景も関係して「南インド」では通じません。

むしろ、イギリスの植民地だったから、准公用語は「英語」です。貨幣を見れば多様性は一目瞭然です。非常に多くの言語が用いられています。

10ルピー紙幣
10ルピー紙幣 【画像の引用元
拡大。様々な言語で表記されている。
拡大。様々な言語で表記されている。

受験アドバイス

先日、「奇蹟がくれた数式」という映画を観ました。これは、インドの数学者「シュリニヴァーサ・ラマヌジャン」の物語です。彼は優れた「直観」によって様々な定理を発見しました。彼は独学で数学を学んだ天才です。敬虔なヒンドゥ教徒で、カーストはバラモンでした。

奇蹟がくれた数式
奇蹟がくれた数式 【画像の引用元
零の発見
零の発見 【画像の引用元

数学者のブラーマ・グプタが628年に発表した「ブラーマ・スプタ・シダーンタ」が“数としてのゼロの概念“を記したことで有名ですが、“記号として0”ではなく、中身を含んだ「ゼロの概念」は、仏教の「空」に通じる発想だといわれます。吉田洋一氏の「零の発見」(岩波新書)がわかり易くてお勧めです。

タージ・マハルが酸性雨で溶け始めた

タージ・マハルは「新世界七不思議のひとつ」の美しいインド=イスラム建築です。

が、最近、コロナの影響で観光客が消えたというニュースがありました。

この建造物が「酸性雨」のために部分的に溶け始めているそうです。困ったことです。

永久凍土が溶け始めていることと同様に、この人間が造った見事な建物も「滅びの道に入った」とは耐えがたいことです。

タージ・マハルは、インド北部アーグラにあって、総大理石でできています。

タージ・マハル
タージ・マハル 【画像の引用元

ムガル帝国第5代皇帝シャー・ジャハーンが、1632年に着工した愛妃のための墓廟です。つまり「お墓」なのですが、これが格別に美しい。いつの日か、君も見学してください。建築・土木の分野に進学する人は必見です。

受験アドバイス

インドの風土を絵画で表現した第一人者は日本画家秋野不矩さんです。まず土の色が違います。長期間インドで生活し、灼熱の大地と熱風と太陽の下で、とても人間が生活することさえ難しい風土の中で暮らす人々の感性をくみ取って、秋野さんが表現する絵画の世界は、圧倒的な「存在感」をもって迫ってきます。

村落(カジュラホ)
村落(カジュラホ) 【画像の引用元
ガンガー
ガンガー 【画像の引用元

世界経済の流れをみると、グローバル企業が、優秀な人材をインドに求めています。インドの大学入試の競争は、日本の比ではなくとても厳しいそうです。

特にインド工科大学(IIT)はレベルが高くて有名です。負けないで下さい。

「インドを素材としたテーマ」が、これからの入試で出題されると思います。

神聖なガンジス川

ガンジス川はヒンドウー教徒(Hindu)にとって「聖なる川」です。

ここでは水浴びする人、お祈りする人、そのかたわらで食器を洗う人、洗濯する人がいます。また、死者はこの川辺で荼毘にふされ、その骨と灰は川に流されます。この伝統的な宗教的な日常風景が、コロナによってどのように変化したか。いまのところ、私には確認のしようがありません。

ガンジス川の沐浴
ガンジス川の沐浴 【画像の引用元

紀元前1000年ころ、中央アジアのステップ地帯からガンジス川流域に侵入したアーリア人は、先住民のドラヴィダ人を南へ追放し、ここに繁栄の基礎を築きました。バラモン教を用い、厳格な身分制を敷きました。カースト制です。

カースト
カースト 【画像の引用元

現在の「北部インド」の諸部族の先祖はアーリア人との混血で、「南部インド」にはドラヴィダ族の子孫が多いです。いまでも対立構造が続いています。

受験アドバイス

現在のヒンドウー教は、バラモン教と各種の民族宗教・民間信仰、及び様々な人の手が加えられて再構成されたものです。私が、第10回に書いた「仏教」は、バラモン教を批判して仏陀(ブッダ)が起こした宗教です。「空」です。

カースト制に反対し「人間の平等」「諸行無常」「涅槃寂静」を主張しています。だから下層民から支持を得ています。さて、君は仏教徒ですか?

インドは、ヒンズー教・イスラム教・ゾロアスター教・シク教・ジャイナ教・キリスト教・バラモン教など「いろいろな宗教・各派のるつぼ」です。イスラム教徒が分離・独立して建国した国が、パキスタン・バングラディシュです。

バングラディシュとノーベル賞のユヌス氏

インドから独立分離したバングラディシュは、ガンジス川の流域にあります。首都はダッカですが、ここは豊富な水資源から「米・ジュート」の生産に適し、「黄金のベンガル」といわれる地域でした。

ところが、イスラム教を信奉する「ムガル帝国」が衰退後、河口部のコルカタに本拠を置いた「イギリス東インド会社」がベンガルの支配権を獲得しました。会社といっても、交戦権を持つ軍隊・徴税・通貨発行・法律の作成施行を行う行政権を持っていました。「民間からスタート」した植民地政策です。

ガンジス川
ガンジス川 【画像の引用元

以後、イギリスは領域を拡大し、インド大反乱(1857~1858年)で支配権を確立した以後は、全域が「イギリス領インド帝国領」となりました。統治権はイギリス王室になり、インドは大英帝国の一部になったのです。

その後、1947年のインド・パキスタン分離独立を経て、東パキスタンとなっていたガンジス川下流域が、独立戦争の結果、1971年にバングラディシュとして独立し、現在の政治領域が確定したのです。

バングラディシュ
バングラディシュ 【画像の引用元

この豊かな地域が衰退し、世界の最貧国のひとつになった最大の理由は、イギリスの帝国主義政策にあります。権力が地域に暮らす人々から奪われたからです。それに対応できなかった失政も問題ですが、犠牲になったのは民衆です。

バングラディシュの民衆
バングラディシュの民衆 【画像の引用元

近年になって、労働力の豊富さ、アジア最低水準の労働コストの低廉さに注目され、多国籍製造業の進出が著しく、新興国として期待されていますが、はたまた他国の犠牲にならないとも限りません。民間からスタートした植民地政策の「再来」にならないように気を付ける必要があります。

受験アドバイス

2006年にノーベル平和賞を受賞した「ムハンマド・ユヌス」氏にお会いしたことがあります。彼は、グラミン銀行を創設して、「貧しい人が相互支援する画期的なシステム」を作ったのです。

バングラディシュは、ベンガル語で「ベンガル人の国」という意味ですが、世界で最も人口密度が高く、貧しい国です。グラミン銀行は5人一組の融資を行い、連帯責任で借りたお金を返済する「貧困層の自立支援をする機関」です。

ユヌスさんは「アジアの文盲率」を下げることに非常に高い関心と熱意を持っていらっしゃいました。

君は、経済・経営の分野を専攻しようしていますね。西欧と異なる発想の「イスラム銀行」についても併せて勉強しましょう。

(安達昌二:お茶の水ゼミナール特別顧問)