お茶ゼミブログ

2010/11/8 国語 秋元
今受験真っ只中の高校生を想定して書いているのだが、
しばしば社会に出ていろんな思いをしたであろう人達からの
コメントが相次ぐことがある。
前回がまさにそうで、望外の喜びにじんとしています。
さて今回は僕の話ではなく、僕が出会った生徒の二人の話。
僕は推薦を否定するつもりはありません。
推薦で合格する生徒はほとんど例外なく
一般入試でも合格しているにちがいない力を持っていて、
最後まで教えることができずに
少し早く別れてしまうことが寂しいくらいなもので、
本当に僕は心から推薦合格者を
祝福と敬意をもって送り出しているのです。
為念。
まずは、3年前のYさんの話。
Yさんの印象は、くねくねした美少女でした。
いつも気弱げで上目遣いの瞳は常にうるうるしていて
「どうしよう…」が口癖の子でした。
そのYさんが慶應の文学部の公募推薦に落ちたときのことです。
ちょうど今頃の時期です。
「先生、落ちた」
あー、まじか、つらいだろうに、
ここは一発「人間万事塞翁が馬」的な話をかまして
思いっきり励ましてあげなきゃとYさんの顔を見たら、
思わず息を呑むほどその目は澄んでいて
不敵な力強ささえ湛えていました。
僕が口を開く前にYさんがきっぱりとした口調で
「先生、私、大丈夫だから」と言ったのです。
「私は必ず一般入試で慶應文に受かるから。
でね、推薦で落ちた時は辛かったけど、
だからそのおかげで本気になれて頑張ったから
慶應に受かることができましたっていうお話にするから。
いい話でしょ。私はちゃんと受かってみせるから、
私が慶應に合格したら先生はこの話を雑談に使ってね」
それからYさんはぱったりと僕に頼ってくることはなくなりました。
人は急にこんなに変わるのかと瞠目してしまうほどでした。
翌年、受験を終え慶應大学文学部の
合格を報告しにきてくれた時のYさんは
もはや麗しき淑女に脱皮していました。
Yさん、すてきな話を俺に見せてくれてありがとう。
1年前のMさんもやはり慶應・文の公募推薦に落ちました。
(つづく)