Benesse お茶の水ゼミナール
物理基礎
丸暗記ではなく物理現象の理解が重要

 センター試験で問われる内容は、物理的な程度としては例外なく易しいのに、高得点が得られない受験生は多い。なぜか。理解が問われる出題が多く、問題集のパターン丸暗記の学習では対応しづらいからである。
 例えば、第1問の問2。「運動エネルギー」と言われたら、まずは「仕事」が頭に浮かぶはず。(浮かびましたか?)しかしながら、等しい条件として与えられた量は変位ではなくて時間だから、仕事を考えるのはちょっと難しそう……じゃあ、運動方程式を書いてみようか、という判断ができるかどうか。
 運動方程式を書くこと、運動方程式から加速度を求めて1秒後の速度を求めること、その大小関係が運動エネルギーの大小関係になるとわかること。これらは易しい。難しいのは、これは運動方程式を書くべき問題なんだ、という判断に至るまでのところであり、こういった筋道建てた思考ができることこそが、「基本が身に付いている」ということである。意味もわからず丸暗記した「公式」に数字を入れて計算する練習を積んでも、(中間テストや期末テストの点数にはつながるかも知れないが)センター試験では何の役にも立たない。

第1問 各分野からの小問集合。
問2 イントロに記載のとおり。センター試験らしい出題。
問3 過去問でも頻出。こういった生活に関するテーマが多いのもセンター試験の特徴。
問4 2018年の第2問に類題がある。出題者の意図ではエからオを計算させたかったのであろうが、うなりの原理を知っていればオは即答できる。各現象の原理までしっかり理解していることが重要であるというメッセージを感じる。共通テストでも同様の原理の理解を問う設問は出題されるであろう。部分点あり。

第2問
A 力学的波動から、干渉に関する問題。
問2 慎重に刻々と変わる状態を考えなくてはならない。丁寧に考えよう。これは原点の変位の時間変化を示したy − t グラフであり、y − x グラフ(ある瞬間の波形)ではないことに注意。

B 電磁気学から、直流回路に関する問題。
問4 「大きくなる」「小さくなる」なので、雰囲気で答えてしまいがちだが、電流の大きさをきちんと考えることが必要。

第3問
A 力学から、ゴムひもにつながれた小球の運動に関する問題。
問2 ゴムひもの弾性力によるエネルギーを、ゴムひもの長さh ではなく伸びの長さh − l を使って定量できたかがポイント。

B 力学から、小球の放物運動に関する問題。
問3 斜方に打ち出したことによる2 次元の運動に戸惑った受験生もいたであろうが、問題文に丁寧な誘導が書かれているので、それに従って解けば直線運動と同様に処理すれば良いとわかる。
問4 問3と同様である。

大学入学共通テストに向けて
 シンプルな問題を通して物理法則の正しい理解が試される、というセンター試験における基本的な方向性は、共通テストになっても維持されると思われる。その中で、グラフの扱い、実験データの解釈、日常生活との関わりといった内容は、これまで以上に重要視されることになるだろう。
 とはいえ、これらの項目は現行のセンター試験でも重視されていたポイントなので、特別に学習方法が変わってくるわけではない。意味もわからず問題集のパターンを丸暗記するのではなく、数式全体から一つ一つの項に至るまで、物理的な意味を理解することに努めたい。

 物理法則や定理、あるいは数式の物理的意味が理解できているかの一つの目安としては、その意味を日本語の文章で適切に説明できるかということをチェックしてみると良い。「加速度」の定義は? 「電流」の定義は? 「運動エネルギーと仕事の関係」ってどのような関係? 「熱力学第一法則」ってどんな法則? こういった内容が、パッと日本語で説明できるかどうか。数式しか頭に浮かんでこない人は、きっと物理的意味を理解しないで丸暗記しているのだろう。
 物理的内容を日本語で説明できることと、数式を書いて計算できること。共通テストで高得点を獲得するためには、この両方ができることが必須条件である。

 なお、2018年11月に実施された試行調査の詳細を以下のリンク先ページに記載している。ぜひ今後の学習に役立ててほしい。
大学入学共通テスト試行調査のお茶ゼミ分析


第1問小問集合各分野からの小問集合。
第2問A:力学的波動
B:電磁気学
A:干渉に関する問題。
B:直流回路に関する問題。
第3問A・B:力学A:ゴムひもにつながれた小球の運動に関する問題。
B:小球の放物運動に関する問題。