Benesse お茶の水ゼミナール
化学基礎
最後のセンター試験だが、特に例年と変わらず。

 例年と同様に、基本を重視した出題となっています。計算を要する問題は昨年と変わらず4題で、一昨年と異なり文字を含んだ計算問題は出題されませんでした。また、正誤問題は基本的に4択で昨年と同様取り組みやすく、出題されている物質も昨年に比べればなじみがあるものばかりでした。一方で、実験装置に関する問題が、昨年と同様に出題されました。昨年のものは、化学基礎のみの学習では注意深く問題文を読まないと正答が厳しい問題でしたが、今年は蒸留装置が問われ、昨年に比べれば題材としては容易でした。しかし、文系諸君にとっては、実験の機会があまりないので、教科書を普段からどれだけ読み込んでいるかが問われたといえるでしょう。

 第1問は物質の構成からの出題で、例年変化はありません。問1では、原子の構造と電子配置に関する内容が出題されています。比較的間違いやすい選択肢はなく、解答しやすい問題なので確実に得点したいところです。問2はめずらしく周期表に関する暗記内容の設問でした。例年問2は化学結合に関する出題となることが多いですが、今年は化学結合に関する問題が出題されていません。問3は分子の極性に関するオーソドックスな問題で、教科書に記載の分子の極性を覚えておけば容易に解答できる程度の易問でした。問4では、物質の状態に関する内容が問われました。間違えるとすれば、固体状態における粒子の熱運動の有無や、気体分子の運動エネルギーの分布に関する選択肢で、トピックとして大きく扱う事があまりない内容ですが教科書にはしっかりと記載があります。小中学校の理科があまり得意でなかった方は教科書の読み込みを十分に行っておきましょう。問5では、通常選択肢問題として出題される分離の問題が、実験装置を組む上での注意点に関する問題として出題されている。温度計の位置や、加熱時に装置を密閉してはいけないことなどが主題で、いずれもよく問われる内容です。問6の計算問題は、よくある典型的な問題ではなく、少しひねった形で出題されています。公式に頼って計算問題をこなしているだけでは対応しづらく、普段から計算で出てくる物質量、質量などの物理量の意味をよく把握して、問題に取り組んでいることが重要です。問7は毎年出題されている身の回りの物質からの出題で、過去にはなじみの薄い物質も出題されていましたが、今年は扱われている物質が比較的身近でわかりやすいものでした。

 第2問は物質の変化からの出題です。問1は同位体の存在割合から、相対質量の異なる二原子分子の存在割合を計算させる問題で、典型的ではありますが、近年センターで出題されてはいない問題です。問2は溶液の調製に関する問題ですが、センターにしては珍しく入試問題を複雑にするためだけの操作手順となっており、受検した学生も面食らったのではないかと思われます。問3は、滴定曲線に関する問題ですが、通常の問題とは切り口が異なっています。滴定開始点のpHから用いている塩基のモル濃度をもとめ、それと中和点までの酸の滴下量を用いて酸のモル濃度を決める点が難しく、さらに、滴定曲線の形から滴下した酸の強弱を判断する必要があり難易度は高めでした。問4は塩の液性に関する出題でした。NaHSO4が出題されており、強酸と強塩基の塩であるが、中性ではないことに注意が必要です。NaHSO4は教科書で発展内容として記載されています。また、同じく酸性塩であるNaHCO3の水溶液の性質とも混同しないよう注意が必要です。問5は電池に関する選択問題で、燃料電池に振れた選択肢がありますが、答えの選択肢は反応の種類に関する基本的なもので問題なく解答できたでしょう。問6はイオン化傾向と金属の反応性に関する問題で、教科書に記載の図表をしっかりと理解していれば容易に解答ができます。

 平成30年度試行調査の化学基礎の問題と比べると、最後のセンター試験となった今回のセンター化学基礎では、やや典型問題とは異なる計算問題が出題されてはいるが、比較的平易で本質的な内容をリード文から考えさせるような出題は見られなかった。大学入試共通テストは、英語の民間試験利用白紙撤回など大きく揺れているが、試行テストの内容を見る限り、化学基礎の問題の難易度は今年のセンター試験に比べて跳ね上がるものと思われ、単発的な暗記や公式に当てはめる様な画一的な学習では対応しづらい内容となる可能性がある。高得点を取るには、暗記や公式に頼らない本質を理解した学習が必要になるため、早目の準備を心がけてほしい。

 なお、2018年11月に実施された試行調査の詳細を以下のリンク先ページに記載している。ぜひ今後の学習に役立ててほしい。
大学入学共通テスト試行調査のお茶ゼミ分析


第1問物質の構成電子配置,分離操作,化学量,気体の精製,元素の性質,化学結合,身のまわりの物質
第2問物質の変化物質量,化学反応の量的関係,正塩の液性,酸塩基反応,実験の安全,酸化還元反応