昨年のセンター倫理の平均点は67.8点と高く,今年はその影響を受けて難化すると予想されていた。問題を難しくするには2つの方法がある。出題形式を難化させるか,もしくは内容を難化させるかである。出題形式に関しては,従来通りの出題形式であったが,昨年4題出題された8択の問題が1題も出題されなかった分,易しくなったといえる。一方,内容に関しては,日本の思想に関する問題で細かな知識を問う問題が複数出題されており,その分,多少難化したといえる。来年のセンター試験に関しては,出題形式での難化が予想されるので十分な対策が必要である。
問題全体の構成は従来通りで,第1問は現代社会の諸課題,第2問は源流思想(古代ギリシア哲学,中国思想,三大宗教など),第3問は日本の思想,第4問は西洋近代思想となっている。この大枠は来年のセンター試験までは変化がないと思われる。ただし,2021年からは論理的な思考力を重視する大学入学共通テストがスタートするため,来年のセンター試験では前倒しで,一部で新たな出題形式の問題が出される可能性がある。この新たな出題形式に関しては,今後,お茶ゼミから今年のセンター試験の分析冊子が出るので,そのなかの「大学入学共通テスト試行テストの分析」をよく読んでおいてもらいたい。
第1問は,昨年度と同じく会話文をもとにして現代社会に課せられた諸課題を青年期にある自己を主体としてとらえていくという問題である。問4の問題は,ステレオタイプにあてはまる発言を選択させる問題であるが,同類の問題は2010年にも出題されている。問7の問題では,小林秀雄と坂口安吾に関する記述の選択肢があり,きめ細かな学習をしていないと解けない問題である。
第2問の源流思想の問題はすべてが4択問題で出題形式としては簡単であった。問2は「ヒポクラテスの誓い」と呼ばれる文書の引用文の内容を読み取らせる問題であり。近年のセンター試験では定番となった出題形式である。この形式の問題では,いかに正確に内容を把握してスピーディーに解くかが勝負となる。同類の問題演習を多くこなしてこの力を鍛えておきたい。
第3問は日本の思想に関する問題で,例年,そう難解な問題は含まれておらず基本的な内容を問う問題が多かったが,今年は少々細かな知識を問う問題が出された。例えば,問6で会沢正志斎という水戸藩士が登場する。この問題では水戸藩が尊王攘夷論を掲げた旗手であったことと吉田松陰の思想の根幹がわかっていれば解ける問題ではあるが,多少,日本史の知識が要求される問題でもあり,確信をもって解答するには難しい問題であったかもしれない。問8の西田幾多郎の「無の場所」に関する問題は西田幾多郎の思想の全体像が正確に把握できていないと正解を導き出すのは困難である。
第4問は西洋近代思想が中心となる。問4のヘーゲルの問題では「理性の狡知」や「人倫」について十分理解ができていないと難しい。また,問5の九鬼周蔵のニーチェの運命論に関する引用文は分かりづらい文章で解くのに時間がかかったと思われる。引用文対策には十分時間をかける必要がある。
第1問 | 現代社会の諸課題 | 現代社会を認識する主体である青年のあり方を含めた総合的問題。 |
第2問 | 源流思想 | 東西の源流思想がバランスよく出題されている基本的問題。 |
第3問 | 日本の思想 | 神話の時代から近代まで幅広い知識が問われる問題。 |
第4問 | 西洋近代思想 | 西洋近代思想家の教科書レベルの知識が問われる問題。 |
平均点変移
2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 |
67.78 | 54.66 | 51.84 | 53.39 | 60.87 |