昨年同様、基本的な問題が多く出題された。教科書に書かれた基本的知識を問う問題や、語句選択問題およびグラフ選択問題を全ての分野から幅広く問われている。第1問は小問集合(5問)、第2問は波動と電気、第3問は力学となっており、構成は昨年度と同じであった。また、センター試験の「物理」で出題された問題と酷似した問題が出題された。過去問学習をしっかりと積んで対策をしておくことも重要である。
第1問:小問集合
問1:力のつりあいに関する基本的な問題。床から離れる瞬間に物体が床から受ける垂直抗力が0になることに気づけば容易に正解できる。
問2:小物体の速度変化に関するグラフ選択問題。小物体が床から受ける動摩擦力が一定であることに注目して、v―tグラフの傾きが一定であるものを選べばよい。
問3:電磁波に関する知識を問う問題。振動数の違い(波長の違い)による電磁波の名称はたびたびセンター試験で問われているので、過去問や教科書をよく確認をしておくとよい。
問4:原子と放射線に関する語句選択問題。正解となる選択肢に明確なキーワードがないため、正解の選択肢を選ぶ問題というよりも、誤りの選択肢に含まれる明確な誤りの語句を見抜いて消去法で解く方がよいだろう。
問5:電力に関する基本問題。電力が単位時間当たりに消費するエネルギーであるという基本事項がしっかりとおさえられていれば容易に正解できるであろう。
第2問
A:波動「気柱の共鳴」からの出題。
2012年「物理I」第3問Bの問題と酷似している。問題が2問で閉管と開管が用意されており、振動数を0から徐々に大きくしていき、共鳴するときの振動数を問うという設定が完全に同じであり、問2の、ヘリウムガスで満たして音速が3倍となり共鳴した時の振動数を求めさせるという設定も同じである。過去問演習をしっかりと積んで対策をしておきたい。
問1:固有振動数が開管では基本振動数の整数倍であるのに対し、閉管では基本振動数の奇数倍であることに注意する必要がある。
問2:気柱の共鳴(弦の振動も含む)では、速さ・波長・振動数のうち、一定の物理量および変化する物理量が何なのかという点を意識して解き進めると、気柱内での波の様子が見えて解きやすくなる。
B:抵抗回路からの出題
問3:並列の合成抵抗の公式を用いて回路全体に流れている電流を求めればよい。
問4:抵抗値が断面積に比例し、長さに反比例することを知っていればこの問題も容易に正解できる。抵抗の式を教科書で確認しておくとよいだろう。
第3問
A、B:運動方程式、仕事とエネルギーからの出題
問1、2:運動方程式や仕事とエネルギーの式を立てることで正解にたどりつけるわけだが、正解できない受験生は「どの物体に注目して立式をするか」という点を意識していない場合が多い。力学でよくでてくる公式(等加速度運動の式、運動方程式、力のつりあい、仕事とエネルギー、力積と運動量、保存則)を立式する際に、1注目物体、2軸、3成立区間 の3つをしっかりと見抜いてから立式するべきである。それができるかどうかが非常に重要になってくる。今後その点に注意して解き進めるようにしてもらいたい。
問3:質量が同じ2物体を傾きの異なる斜面上に置き、垂直抗力の大きさと、地面に着くまでの時間を比較する問題。
定性的に考えるならば、小物体2の斜面の方が傾きが大きく、加速度が大きくなる。また距離も小物体2の方が短いので床に着くまでの時間は当然小物体2の方が小さくなるということで説明がつく。
また、定量的に考えるならば、それぞれの物体について等加速度運動の公式を用いて時間を求める。その2式を比較して、角度以外の量が同じであるので角度の大小から時間の大小を比較するということもできる。どちらで答えてもよいわけだが、問題を解く際にいつでも定性的、いつでも定量的というようにどちらかに偏ることなく、問題に応じて使え分けられるようになると学力レベルが上がったと言えるだろう。普段から問題を解く際にどちらの目線からでも解く練習を積んでおけばそのようなことができるようになってくるので、ぜひ今後やってみてもらいたい。
問4:物体の移動方向と力の向きが垂直であるので、垂直抗力は物体に仕事をしていない。また、重力が小物体1と小物体2にする仕事の大小比較の問題だが、重力を斜面方向に分解して、それぞれの物体について重力がした仕事を求めてもよいが、重力が保存力であることに気づけば、経路によらず仕事は一定となるので、計算を実際に行うことなく正解の選択肢を選べるであろう。保存力というものを正しく理解しているかどうかを確かめる問題であるとも言えるであろう。
第1問 | 小問集合 | 5題からなる小問集合 |
第2問 | 波動と電気 | A:気柱と共鳴 B:抵抗回路 |
第3問 | 力学 | A、B:運動方程式、仕事とエネルギー |