Benesse お茶の水ゼミナール
生物
考察力と文章読解力を強化しよう

今年は,例年に比べて考察問題が多くなりました。再来年からの新共通テストを意識しているのでしょうか。問われている知識は基本的な事項が中心でしたが,たくさん文章を読んだり,グラフを見たり,表を見たりと考察力が試された試験でした。ただ用語を覚えても,まとめのノートをつくっても点は取れません。問題演習を通じて入試生物に慣れていこう!

 今年も第1問が生命現象と物質,第2問が発生,第3問が動物と植物の環境応答,第4問が生態と環境,第5問が進化・系統,選択問題の第6問は分子生物学の問題,第7問は生態と環境〜進化・系統の分野からの出題でした。
 特に教科書の後半で学ぶ「生態系と環境」,「進化・系統」が大問2問と大きなウェート(配点ベースで4割近く)を占めていることから,早期に対策が必要です。でも学校では結構飛ばされてしまうようで(場合によってはセンターに間に合わないことも),現役生はかなり対策が難しいようです。さらに,近年の傾向として,学校の定期試験のように,ただ用語を覚えているかについてだけを問うのではなく,未知の現象が教科書のどの現象にあてはまるのかと問う問題が出題されてきています。ただ用語をいたずらに覚える学習では点数に結びつきません。早期に入試を意識した理解中心の学習が必要です。

 さて,今年の問題を見てみよう。
第1問は「生命現象と物質」の分野から。
Aは光合成に関する実験考察問題。いつもは知識問題からスタートするのでびっくりしたかもしれませんね。問1は実験の結果から判断する問題だったのに,問題文も読まず,知識だけで解こうとした受験生がいたかもしれませんね。実験考察問題としては良問です。確実に取れるようにしよう。Bは細胞の膜やタンパク質に関する基本問題。浸透圧は教科書で扱いが軽いのに出題されましたね。

第2問は「生殖と発生」の分野から。
Aは三毛猫をテーマにしたライオニゼーション(雌におけるX染色体不活化)の問題。知っている受験生が多いと思うが,問題文を読めば理解できる内容です。問2は問題文を正確に読めているかが分かる良問。これを間違える受験生は読めていないですね。
Bは気孔密度が制御されるしくみ関する考察問題。過去問にも同じようなパターンの問題があるので,これを解いたことがあれば余裕でしょう。過去問は同じ問題がそのまま出ませんが,思考のパターンや解答手順が同じ問題は繰り返し出ています。

第3問は「生殖と発生」の分野から。
Aは視覚についてですが,そのまま知識を問わないことが面白いですね。問1は知識があっても文章をきちんと読めていないと間違えます。問2は夜空の星をじっと見つめると余計に見えなくなる有名な話ですね。問3はいつもと違う問題だけど,いつもの問題とどこが同じでどこが違うかを考えれば答えられたはず。
Bは植物の環境応答に関する問題。これも過去問の問題の頻出パターン。接ぎ木の実験で,地上部が重要か,根が重要かを考察する問題は何回も出題されています。

第4問は「生態と環境」の分野から。
Aは個体群から。問1はグラフから年齢ピラミッドの型を考えるのは面白いですね。ただの知識を聞くのでなく,どれにあてはまるのかを考えされる問題が最近多くなってきました。問2は典型的な考察問題。問題文を読んで,各条件が何を示すか読み取れば簡単ですね。
Bは種間競争の考察問題。若干読み取りにくい問題だったかもしれません。

第5問は「進化と系統」の分野から。
知識問題中心ですが,問3が地味に共生説についても聞いているので面倒くさいかもしれません。進化の問題は,知らない知識について聞かれることもあるかもしれませんが,知っている知識で何とか答えを絞っていきましょう。

選択問題の第6問は「分子生物学」の分野から。
少し難しいですね。塩基配列の問題があるので,みんな敬遠したかもしれませんね。問2は5’からATGを探せばいいんですが,間違って3’から読み取ってしまった受験生も多いかもしれません。

選択問題の第7問は「生態系」の分野から。
問1は問題文と表を読む余裕があれば解けるのですが・・・という問題ですね。問題文から,ハチが肉こぶとハエを捕食すること,肉こぶが小さいとハチが,大きいと鳥が捕食することが読み取れれば解答できたでしょう。問3も自然選択について理解してるかが問われていますね。こっちを選択した受験生が多いかな。

 最後に,生物は暗記だと言われますが,近年のセンター試験をみると果たしてそうでしょうか。教科書が厚くなり,覚えることが多くて大変だといわれていますが,高得点をとっている受験生がすべての内容を暗記しているでしょうか。実は,高得点の受験生には基本的な内容だけを押さえ,問題演習を通じて,考察力を磨いた人が多いです。
一問一答の問題もいいですが,過去問演習を通じて,考察問題で知識を使うトレーニングをしましょう!最低限の知識で高得点が目指せますよ。


第1問生命現象と物質A 光合成に関する実験考察問題
B 細胞と分子に関する基本知識問題
第2問生殖と発生A 動物の生殖に関する考察問題
B 植物の発生に関する実験考察問題
第3問生物の環境応答A 視覚に関する考察問題
B 植物の環境応答に関する実験考察問題
第4問生態と環境A 個体群・種内関係に関する考察問題
B 種間関係に関する実験考察問題
第5問生物の進化と系統A 生物の系統に関する基本知識問題
B 生物の進化に関する基本知識問題
第6問生命現象と物質分子生物学に関する実験考察問題
第7問生態と環境・進化種間関係に関する考察問題と進化についての基本知識問題


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61.3668.9763.6254.9953.25