Benesse お茶の水ゼミナール
英語
陽動作戦。

平成26年度のセンター試験英語の特徴として真っ先にあげられるのは問題形式の変更で、①第2問Aの語彙文法の2穴化と、②第3問Bの余剰文除去問題だろう。見た目にもはっきりとした変化だからだ。だが、これらの変化で大きく失点した者はいなかったのではないか。

実はそれ以外のところでもセンターは「分かりにくい変化」を、問題の枠組みという点で仕掛けている。むしろそうした問題の正答率は下がったようだ。

分かりやすい変化、分かりにくい変化の双方について具体的に見てみよう。

まずは「わかりやすい変化①」の、語彙文法問題の2穴化から。

Even though I ( A ) spent two years in the US, I've never ( B ) to the Grand Canyon. Maybe I'll go next year.
(アメリカで2年過ごしたことはあるが、グランド・キャニオンには行ったことがない。来年になったら行くかも)
 選択肢はAがeverかonceのいずれか、Bがbeenかvisitedのいずれかというもので、全部で4択にしてある。正解はAがonceで、Bがbeenで、お茶ゼミの簡易調査では正答率は35%程度であった。非常に低い正答率だが出題形式のせいではない。この形式の他の問題は75%や89%という数字が出ている。形式変更が正答率に与えた影響は殆どないと言っていいだろう。
 この問題で難しかったのはAのonceで、「一度」「かつて」の意味の副詞。文末に置かれるだけでなく、特に「かつて」の意味では中位(助動詞の後・本動詞の前)に置くこともできる。
e.g. I once lived in Taiwan.(かつて台湾に住んでいたことがある)
 恐らく空所が中位にあることからeverを選んでしまった受験生が多かった。基本的な文法事項でまさに受験生の知識の穴を突いた良問だったと言えよう。ちなみにbeenとvisitedで間違える者はほとんどいなかった。

次に「わかりやすい変化②」の余剰文除去問題を見てみよう。以下はひとつながりの英文として出題されたものの全訳である。

・田舎と都会とどちらに住むのが好きか?
① 国連の調べでは地球70億人のうち半数は田舎に住んでいる。
・だがどんどん都市へと移動している。
② 35年もすれば世界の3分の2が都会に住むようになる。
③ 都会のアパート暮らしは便利だが寂しいこともある。
④ 都会は人口過密で暮らしにくくなる可能性がある。
・とはいえ今の流れでは自分の住処を選べない時代が来るかもしれない。

①~④のいずれかが文章の一貫性から取り除くべきものである。こういう問題はどう解いたら良いのだろう。ちなみに答えは③の「アパート」である。これは、実は一種の要約問題で、文章全体が提起している問題(イシュー)を掴む力が試されている。

この文章のイシューは「都市への人口移動」であって、「都市の住み心地」ではない。テーマは確かにともに「都市」を含むが、それではお粗末過ぎる。都市は都市でも「人口移動」がイシューである。

文章を読むときに「経済の話だな」とか「文芸批評の話だな」とかいうテーマのレベルで分かったつもりになってしまう人はよく反省しよう。こういう問題には弱いはずだ。ちなみにお茶ゼミの調べではこの問題の正答率は75%。3問出題された他の2問も96%、85%という数字で、特に難問というわけではなかった。

それでは最後に目立たない変化についても見ておこう。第4問Aのグラフ読解問題から最後の設問(第4問)である。まずはリード文を紹介する。

What topic might follow the last paragraph?
(どのような話題が最終段落に続く可能性があるか?)

例えば、What topic is dealt with in the last paragraph? Choose the best from the following statements.(最終段落で述べられている話題は何か。次のうちから適切なものを選べ)と言っているのではない。

文章の形式は英文とグラフの双方を参照しながら情報読取りをするというもの。内容は、よその州から人を引きつけるネバダ州のような「牽引都市」と、生まれた時から住んでいて離れたくないミシガン州のような「固着都市」の二項対立をもとに進む。まず双方の説明とどの州がどちらのカテゴリに属するかが述べられたのち、「引っ越し派」と「定住派」の動機分析に移る。「引っ越し派」の動機として「都会の方が仕事が多い」「単身赴任を避けたい」「子供に良い環境」などが挙げられた後、文章は、唐突に、終わる。

つまり、「定住派」の動機が述べられないまま尻切れトンボで文章が終わってしまうのだ。そこで、最後の設問「最終段落の後に続く可能性のある話題は?」となる。

正解は「故郷の州に留まる理由」で、正答率は実に24.1%。最も多い間違いは「『引っ越し派』が他の州に求める業種」であった。完全にやられた恰好だ。

これはセンター試験の第4問で初登場というだけでなく、全大学の入試問題(ないしは模試)を眺めても決して多くはない出題パターンである。センター試験の過去問対策をしっかりして臨んだ本番受験生だけでなく、頭柔らかい高1・高2の君たちでもうっかり引っかかってしまったという人はいるのではないか。

センター試験そのものの存続がこれから数年というスパンで問題となったこの一年であったが、現行のセンターは良い点も悪い点も含んだまま、地道にブラッシュアップ(磨き上げ)を試みている。

現高校生はこのタイプの試験で受験に望むことになる可能性が高い。基礎知識の定着と運用の2点を心がけ、柔軟な読解力を身につけよう。それは単なる受験勉強に留まらない、英語力の柱の一つとなる。


第1問発音・アクセント単語を使った発音を問う知識問題。
第2問語彙・文法・構文短文を使った文法・語彙などの知識問題。
第3問難語推測・討論要約・不要文削除文章素材を使った情報読取り問題。
第4問グラフ読解・パンフレット読解図表など非文章素材を使った情報読取。
第5問多視点読解複数の視点から書かれた文章素材を使った情報読取り問題。
第6問長文問題複数の段落を含む文章素材を使った情報読取り問題。


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