昨年と同様、全体としてセンター「倫理」と「政治・経済」からの寄せ集めの構成でしたが、注目すべきは、政治経済分野に目立った変化はなく、倫理分野に変化があったことです。それは、当科目だけのオリジナル小問が2問出題されたことと、「倫理」から難問と言うべき問題が数問選ばれているということです。したがって、難易度は、倫理分野がやや難化、政経分野が昨年度並みと言うべきでしょう。
以下、当科目を選択する人のために、学習上の留意点を書きます。
(1)ただ事項(人物名・単語・著書名など)を暗記するのでなくその事項の意味(倫理なら思想内容)・仕組み(政経なら制度)を理解する必要があります。たとえば【17】(倫理分野)、【28】(政経分野)はいずれも、単なる「カント」や「情報公開」といった人名・事項を暗記するだけでは解答できず、それらがどのような意味内容と性質、仕組みを持つのか、なぜそのような事柄が必要とされたのかといった「つながり」を理解する必要があります。とりわけ政経分野の場合は、制度の定義を問うだけではなく、その制度が確立した背景・意義、歴史的背景、そして、その問題点や改善策までも問う問題も出題されます。従って、高得点を狙う受験生はそのレベルまで理解する必要があります。
(2)時事問題への対応が必要です。といっても、単に時事問題にだけ興味をもつだけでなく、倫理と政治経済の教科書レベルの基本知識を身につけたうえで、それをもとに時事問題を理解することが必要です。たとえば【1】(倫理分野)は育児・介護休業法について、【27】【29】(政経分野)は選挙や世界情勢についての基本的な知識の定着度が問われていると考えるべきです。
(3)図表問題への対策も必要です。ただし、この問題は倫理分野よりも政経分野の方が難しい傾向があります。政経分野の【23】【27】【29】【36】といった図表問題は、単純な基本知識だけでは解答できない人もいたでしょう。これらは倫理分野の【3】に比べれば難しいので、データを読み取る練習を積み重ねる必要があります。お茶ゼミのテキストは多くのデータを載せており、授業でデータを分析する練習をするので、本番で初めて目にするデータであったとしても、授業で養った分析力で解答を導き出すことが可能になります。
(4)これは政経分野だけですが、計算問題への対応が必要です。昨年は1題だけで、今年は出題(今年の「政治・経済」の【4】のような出題)がありませんでした。しかし、来年は出題の可能性もあるので、対策と練習が必要でしょう。
(5)すでに述べたように、倫理分野は今年は難化したと言えます。【4】【5】【10】【11】【18】は「倫理」においても難しい問題ですし、当科目オリジナルの【13】【14】もけっして易しい問題ではないです。もしこの傾向が来年も続くとすれば、倫理分野も手を抜けなくなるでしょう。
上記を踏まえて当科目を選択する2年生の皆さんに総合的にアドバイスしますと、
「政経分野を先に丁寧に学習しつつ、倫理分野も手を抜かずに追い込むべき」
というところでしょうか。というのも、政経分野の学習が重要であることは昨年と同じですが、今年は倫理分野が難化したため、表面的な学習ではここで失点する可能性が出てきたからです。したがって、具体的な戦略としては、政経分野には高3の初めから取り組んでおき、倫理分野は夏以降から本格的に取り組むというスケジュールになるでしょう。その際重要なのは過去問演習で、「倫理」「政治・経済」の両方の過去問で練習するべきです。各事項の理解・記憶→過去問演習→確認・復習のサイクルを繰り返しつつ得点力を高めていきましょう。
第1問 | 青年期と現代倫理 | 基本的には「倫理」第1問からの抜粋。問4と問5は難問。 |
第2問 | 日本倫理思想 | 基本的には「倫理」第3問からの抜粋。問5と問6は難問。 |
第3問 | 西洋倫理思想 | 基本的には「倫理」第4問からの抜粋。問1と問2は当科目オリジナルだが、易しくはない。問6は難問。 |
第4問 | 発展途上国の経済的台頭 | 課題文は当科目オリジナルだが、実質的には各分野からの寄せ集め。 |
第5問 | 民主主義と選挙制度 | 「政治経済」第3問のまるまる流用。 |
第6問 | 市場の仕組みと消費者問題 | 「政治経済」第4問のまるまる流用。 |
平均点変移
2012 | ||||
67.14 |