Benesse お茶の水ゼミナール
生物I
文章量が減少し,知識問題の割合が増加!正攻法の学習を!!

 生物は暗記科目と思われがちだが,理解の伴わない単なる知識の寄せ集めではセンター試験にはとても太刀打ちできない。今年度の出題もそのことを物語っている。それでは,センター試験で高得点を取るためにはどのように学習していけばよいのだろうか。今年のセンター試験の実際の問題を参照しながら見ていくことにしよう。

 センター試験では,大きく分けて知識問題と考察問題の2つのタイプが出題される。その2つの問題の割合は年度によって異なるが,知識問題の割合は6割前後であることが多い。つまり,知識だけでは60点前後しか取れないのである。したがって,考察問題を得意にしない限り,センター試験で高得点を取ることはできない。とはいえ,全体の半分以上は知識問題であるわけだから,まずは知識を高めるためにはどのようにすればよいかを扱った上で,考察問題について見てみることにしよう。

 今年度のセンター試験では,例年に比べて考察問題の割合が減少し,その分,知識問題の割合が増加した。
 「ってことは,やっぱ用語とか現象を丸暗記して,知識量を増やしていけばそれなりの点数が取れるんじゃないスか?」といった声が聞こえて来そうだが,それは甘い!まず,知識は部分的にそのことだけを覚えても,そのテーマにおける一連の内容と関連させて理解しておかないとすぐに忘れてしまうからだ。さらに,各分野における位置付けを把握した上で,他分野との関連性を意識して体系的に整理しておかないと,入試では得点に結びつかない。
 例えば,第1問の問2の正誤問題「①ヒトの細胞のなかには,核をもたないものもある。」については,「細胞・組織」の分野における知識だけではなく,「動物の反応」における知識も必要である。「細胞」の分野では,ヒトは真核細胞からなる真核生物であり,真核細胞には核(核膜)があるということを教わるが,仮にその知識だけしかなかったとすると,この選択肢①は誤っているという判断になって間違えてしまう。ところが,「動物の反応」の分野で出てくる「赤血球は無核」ということを知っていれば①は正しいことがわかる。これはあくまで一例であり,このような他分野の知識がなければ正解に至れない問題は他にも出題されている。
 センター試験では,出題される分野が大問ごとに決まっている(第1問は「細胞と組織」,第2問は「生殖と発生」,第3問は「遺伝」,第4問は「動物の反応」,第5問は「植物の反応」)が,必ずしもその分野のみから出題されるわけではないことに注意してほしい。
 このような複合的な内容の出題に対してはどのように対策を立てればよいのだろうか。結論から言えば,有効となる学習法は全分野を2回学習することである。一通り全ての分野を学習した後に,全体的な視野をもってもう一度学習することで生物という学問の全体像を把握することができるので,これによって他分野と融合した問題でも容易に解くことが可能となる。なお,お茶の水ゼミナールの「センター生物」ではこの点に留意し,1年間で全ての分野を2周するカリキュラムになっている。

 さて,それではいよいよセンター試験で高得点を取るカギとなる考察問題について触れることにしよう。センター試験で最も差が付くのは考察問題である。その一つの原因として,考察問題では知識が備わっていたとしても正解にたどりつけないということが挙げられる。
 例えば,今年度のセンター試験の第2問B問題では,ウニの受精が出題され,「受精膜の形成と,卵の細胞質基質のカルシウム濃度(卵内カルシウム濃度)との関係」について問われている。当然ながらこのような内容が掲載されている教科書はないし,このことを知識として知っている受験生はまずいない。したがって,与えられた実験データから考察して結果を導き出さなくてはならないわけである。このような問題を解くときに必要となるのは,考察力だけではない。考察するためには,まず提示された文章をしっかりと読み解く力が必要となるし,読み解いたその情報をきちんと整理した上で,その問題を解くために必要なデータを把握する力も必要となる。さらに,与えられた実験結果や図表などから必要となるデータを正確に読み取ることができなくては考えることすらできないので,そのような力も身に付けなければならない。
 これらの力は短期間で身に付くものではないので,早めに対策をする必要がある。また,自分ひとりで学習するのが困難な部分であるから,塾や予備校などで良き指導者のもとでやり方を教わるのが最も効率が良い。
 以上のようにセンター試験で高得点を取るためのポイントは体系化された知識を身に付け,考察問題で得点できるようにすることである。生物は暗記科目であるという考えがいかに間違っているかということが今年度のセンター試験の出題からもわかっていただけたであろう。センター試験の生物では出題に偏りがなく,正しい学習法でしっかりと勉強すれば必ず高得点が取れるようになっている。頑張ろう!


第1問細胞と組織基本的な知識を中心とした出題であるが,他分野の知識を必要とする
第2問生殖と発生「生殖」が題材であり,ここ3年連続して出題されていた「発生」が出題されなかった
第3問遺伝「連鎖」が出題されず,取り組みやすい出題であった
第4問動物の内部環境の調節腎臓や恒常性など幅広いテーマからの出題であったが,内容は基本的な知識問題
第5問環境と植物の反応光合成,植物ホルモン,花芽形成に関する知識・グラフ読み取り問題


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