お茶ゼミブログ

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2020/10/21 国語 秋元


人間万事塞翁が馬②


今年はコロナや新入試への不安感から推薦を考える高3生が多い気がします。

そんな中、「書類不備」で推薦に通らなかったという生徒さんが

僕のクラスにいました。


本人に「書類不備ってどういうこと?」と思わず聞きました。

すると書類に不備があったわけではなくて

出願の締め切りまでに提出が間に合わなかったとのこと。

その子らしからぬ間抜けさに驚いていると、

「コロナのせいなんです」「??」

てっきりコロナに罹ってたのかと目を丸くしていると、

そうではなくてコロナの影響で

郵便局が閉まる時間が早まっていたのを知らず、

1時間遅かったとのことでした。

「うわー、まじか!?」僕は慰める言葉がしばらく出てこなかったのですが、

おずおずと僕の愚にもつかない体験話をしてしまいました。



僕の場合は全く同情の余地がなくて、

試験日を1日思い違いしたために2浪が決定した、という話です。

1浪時、受けた大学が全敗したのですが、

「2浪だけは何があろうがまかりならん」

との通告を親から受けました。

僕だって2浪なんて、さらにもう1年も受験勉強するなんて

真っ平ごめんです。利害は一致しています。

当時は敗者復活の3月入試が一部の私立大学でありました。

その中の某大学に狙いを定め、

わざわざ願書も過去問も当大学まで足を運んで買い求めに行き、

3月のその日が来るまで僕は猛勉強を繰り広げました。

1浪時で一番勉強した日々だったことは断言できます。



本番の前日、同じ境遇だったS君に電話をしました

(当時はもちろん家電です)。

「やあ、S。いよいよ明日だね」

「そうだね。明日だね」

「長かったなー」

「長かったよね...」

「みんなとっくに受かって春を満喫してるもんなー」

「ほんとだよなー」

「おれ、けっこう勉強したぜ」

「おれもすごいした笑」

「でも、おれらも明日で終わるな」

「そうだな。終わるな」

「すべては明日だな」

「明日だね」

「...明日さ、終わったらおれらだけで打ち上げしようか」

「いいね!ふたりしかいないけど打ち上げしようよ!」

「なら、明日、試験終わったら校門前で待ち合わせな!」



電話を切った後、

とてつもなくすがすがしい気持ちになったことを覚えています。

夕食の時間でした。

ご飯も沁みるようにおいしかったです。

今日ですべてが終わる。

そう思うと万感こみあげ、お米の一粒一粒にありがたみを感じました。



一緒にご飯を食べていたおふくろが、ふと呟きました。

「あきや、かあさん、何か嫌な予感がするの」

あー、疲れているんだろうな、と思いました。

「あきや、やっぱり嫌な予感がする」

あまりにも言うので、

「何だい、母さん?」と僕は澄み通った顔で聞きました。

「あきや、今日、もしかして試験だったんじゃない??」

その時、おふくろは気がおかしくなったのだ、と思いました。

「えーー、何言ってるの。明日だよ、明日!」

「いや、やっぱり気になる。嫌な予感がする」

「えー、何言ってるの。だってついさっきもSと明日の話してたじゃん。

あり得ないよ。試験は明日だって」

「いや、すごく嫌な予感がする。あきや、今日が試験だったんじゃ」



「あー、もうわかったよ。母さん、僕は本当に信頼がないんだなー。

たしかにそうだよね。母さんにはこの一年間本当に迷惑をかけたよね。

信じられないのはしかたがないよね。わかったよ。わかるよ。

その信じられない気持ち。今から受験票持ってくるよ。

僕のいうことが信じられなくても受験票を見れば安心するよね。

わかったよ。持ってくるよ。

しかたがないなー。持ってくるからね」

僕はそう言って箸を置くと、自分の部屋に受験票を取りに行きました。

その間も母は「嫌な予感がする。嫌な予感がする」

と呪文のように呟いているのを背中越しに聞いていました。


「ほら、母さん! 見てみなよ。この受験票、日付のところ、

3月●日って書いてるじゃん、●日って、ほら、あーーーー、今日?????!」

その直後の母親の阿鼻叫喚ぶりは割愛します。

S君にすぐに電話を掛け直したやり取りも割愛します。

S君は翌日受験する振りをして、結果大学には進学しませんでした。

僕はこの日から「2浪」という世界線に足を踏み入れることになりました。



今から振り返って一つだけ断言できることは、

1浪で某大学に進学していたとするならば、

間違いなく予備校講師にだけはなっていなかったということです。

そもそもその発想がなかったし、

1浪時の学力では予備校講師になることもできなかったでしょう。

予備校講師になっていなければ、

お茶ゼミに勤めることもなかったでしょうし、

お茶ゼミに勤めてなかったら、

「合格の流儀」というブログを執筆することもなかったでしょうし、

そもそもお茶ゼミで予備校講師をしていなかったら、

妻とも三人の息子とも出会えなかったし、

君ともこうして話すことはできなかったよね、とまで話したとき、

目の前のその生徒はふふ、と軽く笑って

「先生、大丈夫です。もう切り替えていますから大丈夫です。」

その顔を見て、あ、すごいなー、この子は大した子だ、大丈夫だ、

と思いました。



僕は2浪してようやく早稲田大学に進学した際に、

学生情報の座右の銘の欄に「人間万事塞翁が馬」と書き込みました。

今でもこの言葉が好きです。




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