文部科学省は、不況による雇用情勢の悪化や、実質的な大学全入時代の到来による大学生の多様化などに対応するため、2011(平成23)年度から大学教育の中に「キャリアガイダンス」などを盛り込むことを決めました。職業指導などを、正課の一環として制度化することが狙いです。
卒業生の就職状況は大学の評価に直接つながることから、最近では多くの大学が、職業指導や就職指導などに力を入れてきています。また、4年制大学への進学率が5割を超える実質的な「大学全入時代」が到来した一方、進路意識が希薄な学生が増えたことも、その背景にあります。
ただ、これまでは、あくまで大学が独自に実施している取り組みというだけで、きちんと制度化されたものではありませんでした。このため、中央教育審議会の部会が昨年12月にまとめた審議経過報告の中で、キャリアガイダンスなどを制度化するよう提言しました。これを受けて文科省が、大学設置基準を改正して、大学教育の一環としてキャリアガイダンスなどの実施を義務付けることにしたのです。
中教審の当初の案では「職業指導(キャリアガイダンス)」となっていましたが、≪特定の職業に就くための職業教育≫という誤解を避けるため、「社会的・職業的自立に関する指導等(キャリアガイダンス)」という名称に改められました。
これについて審議経過報告は「職業を通じて社会とどのように関わっていくのか、明確な課題意識と具体的な目標を持ち、それを実現するための能力を身に付けられるようにすることが課題となっている」と説明し、そのような取り組みが日本の大学においては十分でなかったと指摘しています。
では大学の教育は、どう変わるのでしょうか。大学設置基準の改正案では、キャリアガイダンスなどの取り組みについて一律に規定せず、具体的な教育内容や方法は、各大学の判断に任せることにしています。
しかし、大学設置基準でキャリアガイダンスが教育の一環として明確に位置付けられたことで、「キャリアガイダンス」や「キャリアデザイン」など、いわゆる進路指導的な授業科目を開設する大学が増えることが予想されます。
企業などで職業体験などの実習をする「インターンシップ」は現在、大学の学部のうち55.2%で実施されていますが、今後、実施大学がさらに増加するとともに、インターンシップに授業と同様の単位を与える大学も、ますます増えていきそうです。
また、審議経過報告は、キャリアガイダンスなどの取り組みを「広く社会に説明していくことが求められる」としています。各大学は今まで以上に、どんな就職指導や学生支援をしているのか、志願者などにアピールすることになりそうです。
大学設置基準の改正により、大学も教育の一環として、いわば高校までの学校と同じように、進路指導に乗り出すことが制度化された、とも言えるでしょう。大学教育も大きく変わり始めていると言えそうです。