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始まりは「経験」から[こんな先生に教えてほしい]
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  • 記事作成日:2009年12月15日
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  • 毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。「NHKデジタル教材」という番組とWebを組み合わせた教材作りや、全国のとびきりの授業を伝える番組を制作するためです。そのなかで、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。


    今回は、富山県のl先生が、初めて理科に出会った小学3年生に行った授業を紹介します。
    l先生は、2002(平成14)年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんを教えた先生です。番組では、田中さんにお手紙をいただきました。そこには、「一つのことを解明するとそれ以上にわからないこと、不思議に思えることが出てきてしまう。それでも前進できるのは、l先生の授業で、自分で考えることは楽しいと学んだから」と書かれていました。

    子どもたちが「自分で考えるのは楽しい」と思えるようになるには、どのように教えればよいのでしょうか?

    l先生の授業のポイントは三つあります。
    (1) 見て触って確かめる。
    (2) 心の中に疑問や発見が自然に生まれるまで待つ。
    (3) 自然の不思議さ大きさを感じるように。
    これは、「考える力」を育てる時の基本です。

    今回の授業のテーマは、磁石の性質です。
    まず、授業は、「思ったこと考えたことを教えてください」という先生の子どもたちへのお願いから始まりました。この言葉は、「授業の主役は、あなたたちだよ」というメッセージです。ストレートに伝えず、「感じる言葉」に言い換えて伝える翻訳機を持っていることは、良い先生の条件の一つだと思います。

    (1) 見て触って確かめる。
    考えるためには、土台となる「経験知」が必要です。これが、子どもたちの中に、どこまであるのかを見極める力は、先生にとって何よりも大切なものだと思います。
    なぜならば、「経験知」の少ない子にはフォローが必要ですし、多い子には、授業を飽きさせない工夫が必要だからです。そこで、「経験知」の少ない子も多い子も参加できる授業作りを意識的に行う試みが学校現場でも出始めています。

    l先生は、磁石について考えるために、磁石でたっぷり遊ぶことから始めます。そのために、一人ひとりに磁石と釘(くぎ)を用意しました。そして時間をかけます。
    子どもたちは、たくさんの釘を使う、並べる、釘を立たせるなど……、さまざまな遊び方を生み出しました。この経験こそが、悩んだ時に振り返り、答えを探すための引き出しとなります。

    (2) 心の中に疑問や発見が自然に生まれるまで待つ。
    考えることを保ち続けるためには、自分の中に生まれた「なぜ?」という思いが欠かせません。そのために、授業では、先生が巧妙な「仕掛け」をします。言葉を換えれば、指示するのではなく、促しながら「待つ」のです。

    l先生は、追加して、プラスチックや鉄のクリップなどを配りながら、子どもたちの変化を待ちました。
    やがて、くっつくものとくっつかないものがあることや「磁石をつけた釘が磁石のようになる」という不思議を発見します。
    そして、「なぜ?」という疑問へと変化していきます。

    (3) 自然の不思議さ大きさを感じるように。
    理科だから「自然」ですが、他の教科にも当てはまるようにすると、「感動や驚きを感じるように」と言い換えられると思います。「ヘェー」「そうなんだ!」と言う驚きは、考えることは楽しいということに気付く入口なのです。

    l先生の配ったワークシートには、五つの質問があります。「おやっ?」「あれっ?」「なぜ?」「どうして?」「やっぱり!」「わかった!」と思ったことを一言で書くというものです。
    「磁石をつけた釘が磁石のようになる」ことを発見した子どもたちは、このワークシートに、「栄養がうつる?」「電気?」「磁石のパワーが送り込まれている!!!」など思い思いの言葉で、自分の驚きを表していました。

    経験は、判断・想像・予想へと結びついていきます。そして、その事実を確かめるための実験へと繋がり、知の再生産活動が本格的に始まります。
    これこそ、理想の授業の一つだと思います。


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