現代社会を受験科目として選択する場合に大切なことは,現代社会という科目が政治・経済や倫理といった科目とどこが異なるのかといったところを明確に理解しておくことである。政治・経済や倫理では制度や思想そのものの内容について理解するということが目的になるが,現代社会の場合はさらに踏み込んで,理解し獲得した知識を使って現代社会を分析したり,現代社会の抱えている問題解決のためにそれを利用して,よりよい社会の構築のための能力を身につけることが目的になる。したがって,現代社会の問題では獲得した知識を活用できるかどうかというところが問われることになる。
しかし,獲得した知識を現代社会の分析や問題解決の道具として利用するというレベルにまで発展させるためには,道具となる政治・経済や倫理に関する基本的な知識が充実していなければならない。そこで,現在のセンター試験の現代社会では主に政治・経済と倫理の基本的な知識を問う問題が多数を占め,統計資料などを用いて現代社会を分析する能力を測る問題はわずかとなっている。
昨年度に関しては,再来年からセンター試験に代わって新たに導入される大学入試共通テストを意識してか,複数の資料や図表を読み取り答えを導き出させる複雑な問題があったが,今年は再び政治・経済や倫理の基礎的知識を問う問題が多数を占めるオーソドックスな問題に戻っている。
来年のセンター試験の現代社会に関しては,今年と同様に基礎的な知識を問うオーソドックスな問題形式を踏襲するか,あるいは大学入学共通テストの実施をひかえて現代社会という科目のあるべき姿を追求する図表や資料を読み取る問題を中心に出題されるか予測のしがたいところではあるが,まずは政治・経済と倫理の基本的な知識を充実させる学習に力を傾け,夏休み明けからそれまでに獲得した知識を活用する方法や技術について演習問題を通して身に着けていくのが王道の学習方法であるといえるだろう。
今年のセンター試験の基礎的知識を問う問題の特徴としてあげられるのが,例年の問題に比べて倫理分野の哲学に関する問題数が若干増えたということがあげられる。従来だと倫理的分野ではそのほとんどが青年期に関する問題であったが,今年はカント,J.S.ミル,アーレント,ヤスパース,ハイデッガー,ハーバーマスなどに関する記述が登場している。比較的学習が手薄になる分野ではあるがしっかりと学習しておきたい。
図表などを読み解く問題として,今後,多く出題されるであろう形式の問題は第4問の問2の高齢者の生活と意識に関する調査結果を読み取らせるような問題である。この問題の場合,基本的な知識はさほど必要ないが複数の図表を正確に読み解く能力が要求される。
第1問 | 経済のグローバル化 | 国際経済理論についての問題で確実な理論の理解が要求された。 |
第2問 | 社会と基本的人権 | 人権にかかわる憲法や政治制度などについての基本的問題。 |
第3問 | 人の社会性 | 倫理分野中心の問題で,哲学分野の内容も含まれる。 |
第4問 | 高齢社会と社会保障 | 高齢社会をテーマとして,様々な分野を横断しての出題。 |
第5問 | 地方創生 | 経済分野中心の出題。レーダーチャートの読み取り問題もあり。 |
第6問 | 欧州の統合 | イギリスのEU離脱問題を受けての時事的な出題。 |
平均点変移
2018 | 2017 | 2016 | 2015 | 2014 |
58.22 | 57.41 | 54.53 | 58.99 | 58.32 |