Benesse お茶の水ゼミナール
化学基礎
「基礎」の意味をもう一度考えてみよう

「基礎」って何だろう?簡単なこと?
今年のセンター試験の問題を見ると,どうやら違うらしい。「基礎」というのは,応用の前提となるもの。つまり,「難しい」ことでも,前提ならば「基礎」。
でも,前提といえど,限度ってものがある。今年の化学基礎は,明らかにやりすぎ。公表される平均点を見れば,実感できる。または実際に受験した先輩たちを見ればいやでもわかる。
では,何が「難しかった」のだろうか?

 本年度のセンター化学基礎も,例年同様,過去問に類似の出題が多数あり,過去問の検討者が有利であったことは間違いありません。とはいえ,すべての問題が過去の出題に沿ったものばかりであったというわけではないのです。本年度の「難化」の原因はここにあると思われます。

第1問
 出題範囲は去年とほぼ同じ。同位体,電子式,原子の構造と周期律,化学結合,混合物の分離。これらの問題は,内容的に平易か否かはさておき,過去に類題も出題されている。つまり,準備が可能であった。去年と違うのは以下の2つ。
(1) 化学量論の前倒し…問5
 昨年は,化学量論は第2問にだけ出題。今年は前倒しで第1問にも登場。もちろん,第2問にも計算はある。問題自体は難しいとまでは言えないが,心の準備が…という受験生を驚かすには十分な問題。2種類の合金を混合するなんて,初めて見た。全部合わせて4kgになるのに,1kg当たりに直さなければいけないのもポイント。十分足元をすくわれる問題。
(2) 探究活動からの出題…問6
 出題者は大好き。学校の先生も大好き。受験生が大っ嫌いな「人間生活と化学」の出題はなかった。代わりに登場したのがこの問題。センター試験は「教科書範囲」からの出題が原則。でも,気体の発生は無機化学なので「化学」の範囲。ルール違反?いいえとんでもない。実はこの実験,教科書の最後,「探究活動」に載っている。「ここまでやらなきゃダメなのか?」とか,「こんな場所,見たことない!」という意見が出てくるであろう冒険的な出題です。冒険された方はたまったもんじゃないでしょうが,ルール違反ではないのです。

第2問
 出題範囲は化学量論,濃度計算,滴定,塩の液性,酸化還元反応,電池の原理で,こちらも昨年同様。目についたのは以下の3つ。
(1) 元素分析は「有機化学」?…問2
 確かに通常のモル計算ですが,有機化学は範囲じゃないし,取り扱いが薄くなったところを突いてきた出題。準備不足が否めない分,時間を食ったのではないかと。
(2) 生データの読み取り…問4
 グラフ大好きセンター試験が,グラフじゃない問題を出題。これだけで十分な驚き。生データの評価はセンター試験のみならず,二次私大でも斬新。こんな問題を見れば面食らうのは当たり前。「我々は理系じゃない!」との憤りが聞こえてきそうな問題。でも待ってほしい。皆さんがこれから進む大学では,文理を問わずデータを集め,解析するのは基本手法。つまり「基礎」なのです。「生データは見やすいように整理する」のでグラフ化するのが手筋。いつも口に運ぶだけのお刺身ではなく,たまには骨付きの焼き魚を食べてみなさいという出題者の言い分なのでしょう。やりすぎかとは思いますけどね。
(3) 反応式の有難さ…問6
 酸化還元反応の判定はセンター試験では過去に何度も出題済み。「単体を含む反応は酸化還元反応」という呪文を唱える受験生に冷水を浴びせる問題。これらの反応が化学反応式で与えられれば,たいしたことない問題だが,日本語。「反応式って有難いね」ということが身にしみてわかる問題。自分で反応式を書いてみればいいじゃないのという出題者の言い分が聞こえてきそうな問題です。こちらも「我々は理系じゃない」という悲鳴が似合う問題。

以上,気になった問題をいくつかピックアップしてみた。これらの問題の共通点は,いずれも「初見に近いので,思ったより時間を食う」という点。基礎科目は2科目で1時間ですから,化学だけに時間を使っていいわけではありません。時間配分に注意。結局は,過去に出題歴のある問題をきちんとつぶして,新傾向問題に時間を残せるかがすべて。


第1問物質の構成初めて探究活動からの出題がなされた。ここはできなくても仕方ない。
第2問物質の変化グラフが大好きなセンターで,あえてグラフじゃない出題。かえって難しい。