この分析を始めて3年経つのですが、他のいかなる教科と比較しても「センター倫理ってどうしてこう簡単なんだろう」と思わざるをえません。地歴のような大量記憶は必要なく、読解は国語に比べればはるかに単純で、理科や数学のような思考力などまるで不要です。必要なのは教科書レベルの理解と暗記で、あとは過去問演習さえ十分に行えば、80点台は固く、90点台もそれほど困難ではない出題です。なお、ベネッセの速報によれば、昨年よりも平均点はかなり下がるようですが、それは「倫理・政治経済」の新設に伴うもので、難化したわけではありません。
以下、〔A〕~〔C〕の三つの観点で、一昨年(10年度)、昨年(11年度)の本試験と比較してみますと、
〔A〕倫理の学習をしていなくてもその場で考えれば解ける問題
('10)10問 ('11)10問 ('12)12問
〔B〕倫理の学習をしていなくても、歴史などの他教科の学習や常識があれば解ける問題
('10)6問 ('11)10問 ('12)5問
〔C〕倫理固有の学習が必要な問題
('10)21問 ('11)17問 ('12)21問
となり、この分け方であれば今年は'10年の出題に近く、〔A〕のための思考力(中学入試レベル)と、〔B〕のための通常の学習(と健全な常識)がありさえすれば、80点越えできるかどうかは、〔C〕のための各思想家・事項の内容理解がどこまでしっかり行えたかによって決まるでしょう。
その際、絶対に行うべきなのは過去問演習で、たとえば諸子百家について問う【8】と福沢諭吉について問う【19】は、それぞれ'10年本試【9】と【19】の類題、といっても過言ではなく、'10年本試を演習したときにチェックしておけば必ず正解できたはずです。さらにあからさまなのは、「八百万の神々」について問う【13】でした。これは'03年本試【19】とほぼ同一(選択肢の一つだけが異なる)の問題で、ここまで過去問演習をしていた人なら即答できたでしょう。過去問演習の重要さを伝えてくれるという意味で、この【13】は目玉の問題の一つです。
ついでにもう一つ目玉の問題を挙げておきますと、【33】は2009年に改正された臓器移植法について問うものでした。これは倫理を現代社会の動向と関連付けて理解しているかを試すという意味できわめて良い問題だったと思います。
あと、フッサールについて問う【28】のように、満点防止の問題も例年通り出題されていますが、これらは無視してよいでしょう。
センター試験に取り組む1・2年生の皆さんに対してお伝えしたいことは、元も子もないですが、「主要教科をしっかり勉強しておけ」ということです。というのも、上記で書いたような特性がある以上、センター倫理に対して、今のうちから特別な対策は必要ないからです。主要教科の得点力を高めておけば、3年の夏以降から追い込んでも十分に対応できます。すでに高校で倫理を履修している人は、定期テストにまじめに取り組み、教科書を通読しておく程度で十分です。3年になったら各思想家・事項の理解・記憶→過去問演習→確認・復習のサイクルを繰り返せば繰り返すほど、点数は伸びていくことでしょう。
第1問 | 青年期 | 例年通りの構成。問3は③と④ですこし迷うかも。 |
第2問 | 源流思想 | 従来どおり、通常のセンター倫理対策で解ける出題。問8は世界史履修者には有利。 |
第3問 | 日本思想 | 問2は、語感で解ければ十分。後は第2問と同様、通常のセンター倫理対策で解ける出題。 |
第4問 | 西洋近代思想 | 問2は②と③で、問3は①と③で迷う人もいるかも。問4は消去法で解ける。問7は難問。 |
第5問 | 現代倫理の諸問題 | センター倫理固有の学習が必要なのは、問2~4のみ。 |
平均点変移
2011 | 2010 | 2009 | 2008 | 2007 |
69.42 | 68.66 | 71.51 | 67.58 | 69.66 |